釜茹でGO!!!!!タイムマシンは古銭式 公演情報 劇団 枕返し「釜茹でGO!!!!!タイムマシンは古銭式」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

     “釜茹で”と言えば石川 五右衛門の名は直ぐ上がるほど、茹でられた時の彼の態度の豪傑ぶりは人口に膾炙しているが、(華3つ☆)

    ネタバレBOX

    今作は、この民間伝承という文化的土壌に村山知義の時代小説を山本薩夫が1962年に映画化、続編「続忍びの者」(1963年映画化)と共に評判を取った作品をベースにしているように見受けられた。
     小説、映画に関して興味のある方は、ネットで検索すれば、関連情報は直ぐ手に入ろう。無論、今回の劇化に当たって先に挙げた作品群がベースになってはいるものの、今作を一言で言うならコンセプトは、タイムトラベラーやタイムリーパーとでもなりそうなSFでもある。自分は小説の方は読んでおらず、映画を見たに過ぎないが映画で描かれていたのは、信長暗殺に関わる伊賀の忍者集団の上忍による下忍の支配構図と信長による伊賀襲撃へ至る顛末、本能寺での信長の死と光秀の決断に関わった伊賀忍者、伊賀集団がそのように走る原因を作った間諜としての半蔵の役割と、表には一切現れないが影で糸をひきこの結果を算段した政治屋・家康、伊賀が滅ぼされての後、雑賀衆に加わった五右衛門らに対する秀吉の攻撃と家康配下の服部半蔵の画策などを描くことによって、忍者集団の支配・被支配の構図(主として三太夫の政治)、情報操作の手管と政治(主として半蔵を駒に家康の手練手管)、為政者と配下の者達各々の争い方の差とその結果齎される政治的死や命その物、死に至る過程の残虐性の階層的差異等々を通して描かれる社会的・人間的不公正に対する疑義。また上忍である三太夫は、その術の源を歴史的にも役行者の修験道に負っているにも拘わらず、今作では陰陽道となっていることなどで陰陽道の日本に於ける二筋の流れのうち、安倍晴明に代表される天文道を安倍家に、賀茂家に暦道を継承させた事実を、現代に通じる占い一般に転化した上で笑いと歴史の分水嶺に於ける決定的失敗を齎せた判断ミスの典型例としてアイロニカルに描いている。
     但し、作家が未だ若く、哲学的なレベルで自由を追及した経験も、また己の実存を通して自由と深刻な対峙を経験したことが無いことも明らかなので脚本の全体が未だ浅いこと、政治の本質たる人心確保とその最も普遍的・効果的な要素としての情報操作(真偽の曖昧化、事実を覆い隠す為のフェイクニュースの捏造拡散・またそのタイミングと拡散対象、その方法手段)に対する掘り下げの未熟は、目指す方向が脚本に言語化されているものの、その各々の要素にその普遍性が何故それほど人間にとって大切なのか、大切な価値であるが故に歴史の表舞台から消されて来たのか、真に大切なもの・ことが、受益者からどのような誹り、反発、妨害、迫害を受けるのか等々の事象を通して、そのこと・ものを示す単語ではなく、その単語を見聞きする者の内側から滲み出させるような脚本が書けるよう、今後独自の勉強で克服して欲しいものの、取り敢えず、目指した方向性については評価したい。演技に関しては、主役を演じた結川 香さんが中々頑張っていた他、三太夫及び五右衛門を女優が演じた点も面白く拝見した。

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    2019/05/06 17:34

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