背中から四十分 公演情報 渡辺源四郎商店「背中から四十分」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2019/05/04 (土) 14:00

    吐露する男、吐露する女、見ず知らずの二人が
    背中でつながるまでの謎解きに惹きつけられる。
    斎藤歩と三上晴佳、まったくなんて役者だろう!
    癒されていくのは彼の背中か、私の背中か・・・?
    私の両隣の男性客がボロ泣きしていた。
    深い揺さぶりに浸った1時間35分。

    ネタバレBOX

    東北の場末の温泉地、ホテルの最上階8階の部屋が舞台。
    案内されて部屋に入って来た中年男(斎藤歩)は、やたら金払いが良く、
    ここで待ち合わせている誰かと頻繁に電話でやり取りしながら
    連れの到着を待っている。
    やがて待ちくたびれた男がマッサージを頼むと
    女将(天明瑠璃子)やスタッフ(山上由美子)が止めるのも聞かずやって来たのは
    大いに“ワケアリ”気味なマッサージ師、せつこ(三上晴佳)だった。
    ここから命がけのマッサージが始まる・・・。

    ホテルの部屋に入って来た時から、中年男の落ち着きの無さ、
    自棄になったような金の使い方、無理難題を吹っ掛ける傍若無人ぶりなど
    本来の彼とは違うキャラになっているような不自然さが目に付く。
    それらが“絶望の果ての決断をした人間”に特有のテンションであることが
    終盤、彼が心情を吐露して初めてすとんと腑に落ちる。

    これはせつこも同じで、男の吐露に応えるように
    せつこもまた問わず語りに心情を吐露する。
    今日初めて出会った二人が、互いの絶望に共感した結果
    誰にも言えなかった胸の内を吐き出し、共有する。
    強烈な共通点が、時間を超えて人を結びつけることを見せつける。

    洗練された役も似合いそうな斎藤さんが、
    歩き方や姿勢に絶妙なくたびれ感を醸し出していて秀逸。
    客と話しながらマッサージするのが身についているかのような
    三上さんの自然な台詞回しが素晴らしい。
    一体何があったのだろう、という興味が途切れることなく、
    というかどんどん大きくなっていく展開の巧さは
    畑澤氏ならではの台詞の面白さ、エピソードのリアルさ。

    どんなに傷んだひとでも、きっと誰かに救われる。
    誰かを救うと自分が救われる。

    今日、マッサージしてもらったのは私だ。
    背中から癒されたのは、私だったのだ。
    ありがとうございました。






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    2019/05/04 23:39

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