WEEK END 公演情報 劇団ピンクメロンパン「WEEK END」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    グリーンフェスタ2019参加作品。
    生死の境にいる人が他の人の体に憑依し、人間の本質を凝視するような物語。人が次から次に殺されるダーク、ノアールといった内容であるが、不思議な力強さ魅力がある。異様な空間(生死の境界、黄泉のような)から俯瞰することによって客観的な視点で観るようだ。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    セットは、2層構造にすることで場面・状況が分かり易い。上手側にある窓ある壁が折り畳むことで、街にある食堂へ早転換する。何となく上手側に洗濯物などが干してあり下町風情が漂い、下手側に陶台や絵画が飾られ富裕さを感じさせる。全体が廃屋らしく寂れた感じがするが、その中でも階層社会を暗示するような舞台セットは見事。深層表現としての照明技術は印象深い。固定照射ではなく、照明光を回転させることによって不安定・不安という情況を思わせる。スポットライトの多用は、観客をその人物に注視させ、しっかり伝えるべきことを印象付ける効果があった。

    梗概…富豪家の息子とその花嫁が新婚旅行先の事故で亡くなった。その葬儀で新婦の姉は新郎の妹と出会う。2人はそれぞれ秘密を抱え、葬儀に参列する。 他方、車で人を引き殺したと思った医師と看護師、しかし轢かれた当人は何故か元気な姿を見せ同乗してくる。さらに別場面...ある街に劇団が訪れるが、看板俳優が突如その舞台を降板してしまう。この街には”家族スープ”という看板料理を掲げた店がある。一見無関係な人々がある街を目指してやって来る。そこで繰り広げられる人々の思惑、憎悪、狂気など負の感情で溢れる。死人から見た生者の営み、その滑稽で哀れな姿を俯瞰することで、人間とは...その本質を抉り描こうとしている。
     
    気になるのは、設定が変わったのかという疑問である。富豪(ローナン産業会長)が生死の境を彷徨っているが、まだ亡くなってはいない。車に轢かれたのは若い男で、その男に会長が憑依したという設定だと思っていた。たしかに物語途中で会長は亡くなるが、それより前に黄泉へ逝ったようで判然としない。異体間による心と体の融合のような現象は、現世なのか来世なのか。また精神科医と偽看護師(実は精神疾患患者)の生死の関わり時点はいつなのかも解り難い。

    生きている時には見えず、亡くなってから分かるという皮肉。生きること、そこに内在する野望・嫉妬・裏切などの感情が人の心(目)を曇らす。その描き方は、「出会いによって人々が混ざり合い、混沌と混乱が生まれる。孤独と矛盾を抱えつつそれでも生きる意味、存在証明のために足掻いて生きようとする人々を丁寧な会話劇とスピーディーな構成によって残酷なまでに見つめた物語」という謳い文句通り。しかし多くの登場人物、多くのエピソードを交錯させるため物語の展開を追うだけに終始し、先の謳い文句を十分吟味し楽しむには難しい。表層的に眺めるだけの公演では勿体ない視点と発想だと思う。
    黄泉の住人か、その案内人は物語の展開に必要だろうか。ダークゆえに少し面白可笑しくユーモアを取り入れたかったのだろうか。逆に物語の世界観が中和されたようで中途半端な印象を残したように思う。もっと話の流れ、雰囲気を大事にしても良かった。

    演技は、カタカナ表記の名前の役者17人が織り成す群像劇。名前は覚えきれず役柄で印象付けるしかないのがもどかしい。とは言え、役者1人ひとりの演技力は素晴らしく、ダークで醒めたような表情の裏に隠された悪意が見え隠れする。登場人物のほとんどが人間らしい厭らしさを持ち、人物の立場や状況によってその表れ方が違う。それを怒気、粘質ある台詞回しで上手く表現していた。表現的に適切かどうか分からないが、熱演だったと思う。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/04/29 23:38

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