満足度★★★
鑑賞日2019/04/20 (土) 13:00
久しぶりに拝見した、天宮良、須賀貴匡のご両人、こんな素敵な俳優になられており、正直、自身の不明を恥じ入るばかり、さりげなく漂う男の色香が素敵。
そして、フルオーデションならではの、ワハハ本舗と宝塚の兄妹という異色の配役(偏見かな)をチェーホフの舞台で見られるのも、そこはかとなく楽しい。
今回の「かもめ」は、フルオーデションとトム・ストッパードの英訳を演じるという2点。
それほど「かもめ」を観ていないので、大きな違いをきちんととらえられていないのだけれど、確かに第4幕のエッジの効いた感じは、ストッパードらしいなあ、とは受け捉えられた。
さて、フルオーデションなのだけれど、パンフレットで読ませていただいた、小川絵梨子さんと鈴木裕美さんの対談、私は諸手をあげてご意見に賛成。ただし、6週間もの時間をかけての結果としては、少々残念。
おそらく、それは選考の仕方や選考眼が悪いというよりは、フルオーデションという方法が成熟していないからなのだと思う。
というのも、役者さん1人1人を観いている限り、それぞれの役で最適の方々を選んだであろうことは想像に難くない。ただ、最適というのが問題ではないか。それぞれの役者さんが演じる役柄が、おそらく役者さんにとっての最適の演じ方をしているが故に、個として見た場合、演出家を揺さぶるような演技になっているものの、粒が立ちすぎてうまく調和していないように思える。言い方を変えると、役者さん個々の良さを最大限に生かそうとしたあまりに抑制が効いていないというか。
その中で、天宮良、須賀貴匡のお2人が、うまく調整役となっているからこそ、演技に映えも観られたのではないかと思う。
通常の配役では、まず中心人物を配役し、そこから演繹的に配役をしていくことになるだろうから、その個性に応じた、かつバランス重視の配役が可能だと思うのだが、フルオーデションの場合、同時進行のためなのか、個々の役で最高のものを求めてしまうのかもしれない。
しかし、フルオーデションの可能性は、舞台の可能性を確実に拡げるものだし、その労力、手間に鑑みても、もっと試されてよいものだと思う。日本の演劇プロデュースの在り方を変えるだろう。プロデユーサーの腕の見せ所、何事も経験からしか生まれない。次回以降に期待する。