ヒトハミナ、ヒトナミノ 公演情報 企画集団マッチポイント「ヒトハミナ、ヒトナミノ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    障害者の入所施設を舞台に、障害者の「性」の問題、福祉・介護の現場が出会う矛盾を描く。シリアスになりやすい題材だが、あけっぴろげなおばさん主任(竹内都子)、出入りの太った金持ち社長(辰巳智秋)が、絶妙のツッコミをいれて、終始笑いが絶えない。出演者に合わせた当て書き(あるいは台本に合わせたキャスティング)が非常にはまっていたし、出演者も、それにこたえて、実に生き生きとしていた。
    ほかの人も書いているが、インゲン豆の細かい胚芽とりという、膨大な単純作業の繰り返しが、会話劇の最中、ずっと続けられているわけだが、これは苦労が多くて報われることの少ない障害者介護の見事な隠喩としてみえた。
    昨年9月の「逢いにいくの雨だけど」につづく、横山拓也作品の二回目の観劇。前作も、ジーンと考えさせられるものが後を引いた(今も続いている)が、今回も、障害者の性というだけでない、仕事と人生、夫婦の絆の問題、社会の不寛容の問題、地方と都会と、多面的な問題を映し出す舞台だった。全6場(多分)。100分休憩なし、割とコンパクトな芝居

    障害者役の尾身美詞も、一途な雰囲気が良く出ていた。ロシアのチェチェンの中学校人質テロ事件を描いた「US/THEM わたしたちと彼ら」の、疲れを知らずに動き回る中学生役も圧倒されたが、今回は車いすに乗って時々出るだけなのに、存在感があった。

    ネタバレBOX

    自堕落で闇を抱えていると思えた男性職員(加藤虎ノ介)が、実は最も真摯に障害者の人生に寄り添っていたという、どんでん返し的なストーリーは、まったく予想外の展開だった。障害者の性の問題という第一段階から、障害者に限らない、性に限らない「愛」の問題、発達障害の人が直面する社会の壁という第二段階に、主題がグッと高まる。二重構造で、作品の奥行がさらに深まっていた。

    若い職員役の税所ひかりも、初々しい新人職員を好演していた。あとで今回が初舞台とあって驚いた。
    彼女の両親の交通事故が、実は母親の不倫絡みという、打明話は全く思いもしない話だった。舞台の背面に小さいけれど、目立つ陰影を加えた。隅々にも手を抜かないこうした細部も光っている。かつての同級生の男女が、別の相手と結婚後も付き合っているという設定は「逢いにいくの雨だけど」では核心部分だった。今回も少しそれに似ている。少しドキリとさせられた。

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    2019/04/21 11:43

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