チョコレートケイキ 公演情報 春匠「チョコレートケイキ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    無言劇ゆえ、沈黙の圧のような緊張感漂う作品。死刑執行までの粛々とした行為が逆に刺激的に感じられる。
    さて、自分の席(2列目、中央やや下手寄り)から観えた気になることが…。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    舞台は拘置所内、中央上部に監獄であり死刑台イメージ、上手側に小部屋を思わせるテーブルと椅子、下手側に刑務官控室、監視モニターがある。刑務官は制服を着て謹厳実直なイメージ。それ以外の人物は医師と宗教師か。全体的に薄暗く、冒頭は刑務官が暗闇の中をライトを照らしながら入ってくる。

    心の叫びのような…唯一、刑務官が小声で喋るシーンは、彼の口を借りた死刑囚の贖罪うわ言のような…。それに連動して、それまで背中を見せていた女が正面を向き血まみれの姿を見せる。死刑囚、刑務官の終始無言は、ラストの贖罪というシーンを印象付ける効果をもたらしているかのよう。具体的に犯した罪の内容やそれに至った状況等は分からないが、むしろ死刑執行を待つだけの男の現在、その淡々とした姿、佇まいが緊張感を生む。もちろん、薄暗い照明、制服姿の刑務官の存在、そして始終無言という雰囲気は圧倒的な緊張感を漂わす。
    演技には、刑務官の職制上の上下関係(徽章の違い)を表すような態度が観られ、細やかな動作にもリアリティが感じられた。実力者ぞろいの演技は迫力があり、物語への集中力を高めてくれる。

    女-被害者(妻であろうか?)は死刑囚の心にある心象形、それゆえ実態がないと思うが、たまたま自分の席から刑務官控室の監視モニターが見え、そこに女の姿が映る(映画なら女が映らない別撮りしたものを使用するだろうが、演劇ではそれが出来ずやむを得ないか)。その見えないはずの女が映るという不自然さは勿体なかった。

    他劇団に暗闇劇という、視覚ではなく聴覚を研ぎ澄ませて劇を愉しむものがある。この公演はその逆で、無言であるから視覚と役者の息遣いで芝居を堪能することになる。人間の五感のうち、聴覚がなくても芝居は堪能できる。その意味でライブという演劇の素晴らしさを再認識した。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/04/14 15:21

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