『のぞまれずさずかれずあるもの』  東京2012/宮城1973 公演情報 TOKYOハンバーグ「『のぞまれずさずかれずあるもの』 東京2012/宮城1973」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    人間の命を問うドラマが増えた。どう生きるかではなくて、生まれる、と言う事はどういう事か。ごく、最近見ただけでも、「まほろば」「R.U.R」。
    この舞台の素材は年長者にはおなじみながら、このところ忘れられかけている菊田医師赤ちゃんあっせん事件である。この事件が年長者の記憶に残っているのは、菊田医師の明確な医学的、倫理的主張と、社会的な環境と事態への対応のずれが、大きくジャーナリスティックな問題になったからだ。今は、こういう「ずれ」は医学倫理だけでなく、さまざまな分野に一層広がって頻繁に起こっているから、改めて問う意味はある。ことに、少子化も話題になり「生むこと」への関心が高まっている昨今ではなおさらだ。
    舞台は、菊田事件をなぞる形で進行する。事件当時は多分生まれてもいなかった作者が書いた歴史ものらしく、慎重で総括的である。だが、テレビの再現歴史ものではなく、小劇場の演劇として見るなら、今少し登場人物を整理すれば、もっと問題の核心に迫れたのではないだろうか。例えば、場面を菊田医院に絞って、医師と養子を引きうける看護婦のドラマにするとか。宗教をめぐる夫婦のドラマをもう一つの柱にするとか。
    説明的で類型的なエピソードやセリフが多すぎるのも芝居としては興を削ぐ。例えば最初の新聞記者のやり取りなど字幕で年号を出せば済むと思う。その分、菊田医師と彼の周囲を分厚く出来たのに、と残念だ。
    若い俳優たちもこの台詞やエピソードをこなすだけの経験がないので、こうなるのはやむを得ないが、役が身につかずリアリティが薄い。
    しかし、この若い劇団にとってはいま世間に関心をもたれるテーマに取り組むのは、勝手な自分の居場所探しを騒々しく見せて自己満足するよりは、はるかに意味があることだと思う。満席だったのを励みに次作を期待したい。

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    2019/04/14 10:36

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