薄布 公演情報 天ノ川最前線「薄布」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    公演は生活感のない、どこか乾いた印象をうける。フライヤーには現代的なアングラを模索してきたが、今回はヒップポップな新境地といったことが書かれている。何となくスタイリッシュで、感情というよりは自分を見つめる心象劇のようだ。しかし悪くはないと思う。
    (上演時間1時間15分)

    ネタバレBOX

    セットはタイトルの薄布のような映写幕があるだけ。シーンに応じてテーブルや椅子が運び込まれる。説明からすると舞台は”東京の街”のどこかということになるが、その情景は浮かんでこない。ただ乾いた印象から、”東京砂漠”というフレーズを思い出す。

    梗概…平々凡々なサラリーマン生活を送っている主人公、その友人で起業して成功している者やカフェバーを経営している者、さらにはひょんなことで知り合ったラッパー仲間など、様々な人々との触れ合いを通して自分自身を見つめ成長しようとする。ラップという韻律を利用して、自分の気持を吐露する。普通の言葉で言い表せない、それをラップに乗せることによって心の自由が得られるという。

    ラッパー仲間と自分の本音表現を言い争う場面は、その気持(心)の正当性を相手に押し付ける、またはマウントするようで本音=自分勝手のように思える。また心の問題を捉えていることから、心療内科のカウンセリングシーンはシュールだ。
    友人との関係も親しくありたい、しかしある程度の距離も保ちたいという微妙な心理。若者の日常断面を切り取り、瑞々しく描いた一種のサブカルチャーのようだ。

    自分の気持に正直であること、同時に相手(友人)の話にも耳を傾ける。それぞれがグループを成し勝手に喋っている場面がある。芝居の台詞としては聞き難いが、実際にはこの騒然とした場面の方がリアル。芝居と現実、どちらの観せ方に重きを置くか、または優先するかは劇作家の思い、そこに観客の理屈は不要かもしれない。この公演、序盤は緩いテンポで説明調の台詞回しに違和感を覚えたが、中盤以降は相手の気持と言いながらも自分勝手な人間の本性が見え隠れする。そんな物語性がはっきりして面白くなった。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/04/13 16:57

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