ヒトハミナ、ヒトナミノ 公演情報 企画集団マッチポイント「ヒトハミナ、ヒトナミノ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    タイトルが公演を端的に表している。説明文にある「一人の職員が利用者に対して性的な介護をしているという噂が…」とあるが、公演の底流にあるのは、介護施設における介護者・利用者の苦悩や介護施設が抱えている様々な問題を鋭く突いた人間ドラマ。
    随所に可笑しみも散りばめられているが、圧巻は心情優先と規範順守という相容れない感情のぶつかり合い。どちらの言い分も解るような…。
    (上演時間1時間40分) 2019.4.28追記

    ネタバレBOX

    セットは隙間のある板塀のような後景、客席寄りにテーブルと椅子が2セット並んでいる。上手にはこの作業場の仕事である黒インゲン豆が入った箱がある物入が置かれている。あまり障碍者支援施設併設の作業場という生活空間は感じられない。セットは作り込まず、むしろ簡素にすることで、逆に人間の在りようを強調させているかのようだ。

    梗概…ある地方都市にある障碍者支援施設併設の作業場で、社会参加とこの施設の運営費を賄うために、近所の窓岡農園から黒インゲン豆の芽を取る作業を請け負っている。納期が明日に迫り、過密労働になっているから職員は疲労と不満でピリピリしている。そんな中、夜勤明けの職員が施設の利用者と外出したことから、以前からあった良からぬ噂が噴出し...。

    公演の見所として、新人職員とこの妙な噂のあるベテラン職員の議論が生々しい。介護施設を利用する人、そこに健常者と障碍者における”性”の扱いに違いはない。確かに新人職員が言う施設のルールは守らなければ人は行き場を失い、施設は信用を失うだろう。一方、障碍者も人であり性欲もある。ベテラン職員は、この施設とは別の施設で勤務していた時に、そこの利用者の母親から切実な相談を受けた。きれいごとだけでは解決できない問題をルールとの間でどう折り合いをつけるか、それは自分自身へ自問自答であり言い訳でもある。その葛藤が痛々しく伝わる。2人の立場と心情は問題を鮮明にすると同時に、どちらも障碍者に真摯に向き合っていることが窺える。繊細で丁寧に救い上げるような台詞が観ている人の感情を揺さぶる。

    演出と演技が実に良い。新人職員・美並(税所ひかりサン)と噂の職員・崎田(加藤虎ノ介サン)の丁々発止。特に加藤サンは現場における理不尽や矛盾、一方で情に揺れる内面を丁寧に演じる好演。また重苦しくなる雰囲気を安澤職員(竹内郁子サン)の軽妙な存在感で緩和させている。障碍者施設というと当たり障りのない描き方になりそうだが、本公演は正面から向き合い、矛盾・差別・偏見などをしっかり問いかけた力作。実に観応えのある公演であった。
    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2019/04/13 12:24

    2

    0

このページのQRコードです。

拡大