満足度★★★
■「青」鑑賞/約130分(鵺的『修羅』約60分+途中休憩約10分+飯田さん『我がために夜は明けぬ』約60分)
両団体とも、60分という尺を上手く使い切れていない印象。タイトルから多くの人が思い浮かべる状況のもと話が進む『修羅』は、もうひとヤマ欲しいところで幕引きとなってしまうし、6団体共通の舞台美術を逆手に取って想定外のシチュエーションでのドタバタ騒ぎを描く『我がために~』は、本来90分は要しそうな物語を無理やり圧縮しているために忙しなく話が進んで、落ち着いて観劇するための視座をこちらがこしらえ上げる前にあわただしく終わってしまう。内容は、これまで観た池内風作品の中では最も純度の高いコメディ。しかし、人間の欲と懶惰を露悪的に描くブラックな作風に池内風味が少し出てはいるものの、人物描写がモリエールの喜劇さながらベタで浅く(あえてそうした感あり)、はっきり言って池内風でなくとも書けそうな内容だし、こういうものは職人的コメディ作家に任せ、池内さんには、池内さんにしか書けない世界を描いて欲しいもの。個人的には、世の理不尽にもがきながらも健気に頑張る人間たちを、突き放しているんだか、優しく寄り添っているんだかよく分からないアンビバレントなスタンスで描き出した短編集『どりょく』の路線を期待。あの中の、清掃夫の悲哀を描いた1編は、今思い返しても秀逸の一語。現代人なら誰もが味わう“人間疎外”を喜劇的に描き出した傑作でした。
あの短編は人間描写が深く、ために、かつて「負け組」と呼ばれた現代人の一類型を描きながらも、人物ひとりひとりがその類型をはみ出して、逆境にありながらも生き生きと喋り、動き、怒っていた。人間描写が深くなると、いきおい“ベタ”を踏み越える。これは物語の普遍の法則の一つ。