コーカサスの白墨の輪 公演情報 東京演劇集団風「コーカサスの白墨の輪」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    パペットというよりは、”人形”という表現が相応しいと思うので、こちらの用語で書く。人形は物語の領主やその妻、特権階級の人々を現している。それによって一方のみ、つまり民衆側の情勢と情況を描き出そうとしている。支配階級は人形が担うことによって印象が弱くなり、逆に民衆側の心情が浮き彫りになる。描く主体が鮮明になることによって、客観性が排除され人情劇としての印象が強くと思ったが、感情の高ぶりは今一つ。
    東京演劇集団風の公演は、骨太な内容を少しコミカルに観せるといった絶妙なバランスが素晴らしい。その劇風はコモン‐センスといったイメージだ。
    (上演時間:1幕90分 2幕70分 途中休憩15分)

    ネタバレBOX

    セットは、二階部を設え両側に階段がある。後景は民芸風の布が何枚も吊るされている。一階中央がメインステージで、冒頭はメインステージを布が横に半円を描くように吊るされている。布が垂れ下がった中央を谷に見立て、先住民と移住民が土地を巡って言い争いをしているところから物語は始まる。これが劇中劇であることを現し、ストーリーテラーが物語の本筋へ誘い込む。

    梗概…よく知られた場面を大括り2幕にして展開する。1幕目は宮殿の召使いグルシェが領主の赤ん坊を助け、苦難の旅路に出る。2幕目はアクダツの放蕩と裁判官としての役割、この2つの物語が繋がり大団円を迎えるというもの。
    ラスト、育ての親か産みの親...どちらが真実の母親か。裁判は混乱の最中に裁判官にさせられたアツダクの判断に委ねられるが、その裁きぶりは日本における大岡政談を連想する。

    物語の根底には人間讃歌がある。しかし、主人公グルシェが領主の赤ん坊を抱え苦難を乗り越えて という物語性があるわりに、妙に客観的な気がする。人間の感情を揺さぶるというよりは、そこにある出来事を客観的・批判的に観るような印象である。確かに歌い高揚する場面や階段の上り下りといった躍動感は観られるが、あくまで騒乱とか逃避行といった事象を描いており、人間の感情ではない。人の目を通した感情よりは出来事を客観的に冷徹に見つめた叙事詩のような印象である。本公演は、一時の感情に流されることを良しとせず、時代を越えて観客を魅了する原作、それに”生”を入れた演出と具現化した役者陣の演技、その総合的な力作。実に観応えがあった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/04/06 14:25

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