第27班 本公演9つめ『蛍』	公演情報 オフィス上の空「第27班 本公演9つめ『蛍』 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    表層的には2人の男の勝負の世界ではあるが、真は自分自身との人生勝負といった内面を描いた物語。2人の心情描写が実に上手い。
    (上演時間2時間15分) 【Bチーム】

    ネタバレBOX

    舞台美術は、スロープのようになだらかな傾斜を作り、上段にある家族の家(一見アトリエ風)、中段に大学の演劇部室(ただし将棋盤が置かれている)、下段上手にソファー、下手にテーブルと椅子といった区分けがされ、それぞれの居場所を示す。上演前には将棋の世界を思わせる障子もしくは格子のような照明、そして日暮が鳴くような音響。それが物語が始まると都会の雑踏のような音に変わり、現実の世界へ引き戻すような手法は見事。

    梗概…それぞれの家庭事情や夫婦の問題によって心を病んだ2人の男性棋士が主人公。表層的には将棋の世界(女性の奨励会員を登場させ、将棋の厳しさ)の勝負事のように思えるが、棋士になるまでの辛苦は自分の生活環境を乗り越えるための試練のようでもある。2人の棋士、その年齢差は10歳ほど違うようだが、勝負の世界は年齢など関係ないことは現在の将棋界を見てもわかる。物語は現在と過去を往還させ、なぜ棋士になったのか、その理由などが順々に明らかにされる。

    物語の展開は現在・過去を往還させるため、同一人物をそれぞれの時代で生きる2人の役者で演じる。そして役柄名ですぐ分からないよう過去と現在で変えている。例えば、幼少期はヤマト(市瀬美和サン)という名前、成人してからはオシダ(塩口量平サン)という苗字。また大学時代のエイジ(鈴木研サン)というあだ名、プロ棋士の現在はサトル(細身慎之介サン)という名前にする。それは演出する上で必要かもしれないが、序盤から中盤にかけては人物の関係性を理解しながら観るのは少し煩雑であり、話が散らばった印象を受ける。

    基本的には2人のプロ棋士の成長譚。1人は小学生の時に別れた姉(実は母)を探すためのパフォーマンス、もう1人はいざという時に勝てない気の弱さへの自己鼓舞。それが現在の対局中に過去の自分が心情吐露するような叫び。この場面が圧巻で心が揺さぶられる。このシーンがクライマックスのようで、個人的にはこの場面で終えても良かったと思う。公演ではさらに、ヤマトが姉と行った公園にサトルの妻と一緒に行って蛍を見るが…。余韻付けかもしれないが、クールダウンのようで先の対局シーンの感動、高揚感が薄らいでしまったのが少し残念。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/03/21 00:30

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