転校生◆フェスティバル/トーキョー09春 公演情報 フェスティバル/トーキョー実行委員会「転校生◆フェスティバル/トーキョー09春」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    惜しむらくは
    役者の声が会場の隅々まで届いてなかった。演者の技量に対して箱が大きすぎたのだ。だから、本当に惜しい舞台だった。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    芝居は子宮の中の胎児の映像から始まる。と同時に刻む時報の音は生命の音でもあり、生まれた瞬間の時を刻む音でもある。カチッ・・カチッ・・カチッ・・カチ・・こうやって私たちは確実に祝福されてこの世に誕生したんだったね。

    場面は高校の教室。ありふれた普通のどこにでもあるような風景がやけに懐かしい。だけれどここに居る高校生は普通ではない。協調的で優秀すぎる。そんな教室での一日の情景を表現した舞台だったけれど、そこにはとてつもなく広い世界観も映し出す。高校生の話題はカフカ論や宮沢賢治論も飛び交い、真面目な論議もあり世俗的なおしゃべりもあり。大人が考える以上にこの頃の、思春期で不完全の彼女達はナイフで刺すような言葉も吐き残酷だったりする。その中でひとりぼっちで希望を持てない高校生の一人がいともあっさりと・・・本当にスパーーン!と飛んで自殺をする。
    その飛び方がまるで・・夏のプールに飛び込んだように綺麗で美しい弧を描くような飛び方で、だけれどプールの底には水が張ってなかったみたいな現実があって・・・。
    きっと観客は息が止まるかと思ったくらいの衝撃だったと思う。

    そんな危うい世代で学校という場所は勉強よりもいかに友人達と孤立しないで上手くやっていくかに集中してしまう。日々頑張らないと保てなくなってくる努力。そういう努力って輪郭がどんどん緩んで正体のわからない重みだけが、ゆっくり増していくのかもしれない。

    かつて私たちはそんな中にいたのだけれど、大人になって振り返ってみると、あの頃の私たちはサイボーグか何かで、時折エネルギーを充電されなければ動く事も出来ない。なんて考えていたんだよね。

    そんな揺れる高校生の心理描写も見事に映し出し舞台は最後の場面で泣かせる。

    全員で手を繋いで、繋いだ手を揺らしながら、
    せーのっ!(掛け声)ドン(飛び跳ねた音)
    せーのっ!ドン。
    せーのっ!ドン。せーのっ!ドン。
    せーのっ!ドン。せーのっ!ドン。せーのっ!ドン。

    この演出はお見事!ここに全容を集約させたといっても過言ではないほど。この時点ではまだ良く解らない感情で泣ける。
    たぶん、これは全員で手を繋いで一緒に・・という演出がワタクシの心の奥の琴線に触れて響いたのだと思う。

    そうして、また時報は刻まれる。

    カチッ・・カチッ・・カチッ・・カチ・・こうやって私たちは確実に祝福されてこの世に誕生したんだったね。




    追伸:ああ、今日は本当に充実した一日だった。マチネでおもいっきり笑わせてもらって、夜はこの舞台で得体のしれない感動で咽び、芸術劇場から出ると、そこには5分咲きの花も恥らう夜桜が見えました。漆黒の闇の中からぽっかりと浮かび上がっている白い花びらの情景はまるで美しい一枚の絵画でした。しばし見惚れる。
    そんな美しい四季折々が楽しめる、めくるめくこの世界はユートピアなのです。


    2

    2009/03/30 11:23

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  • はい。大人になる前のどこか欠けたところのある時代。それでもその頃は自分達は立派な大人なんだ。って勘違いしていた時期。一方で得体のしれない不安があった時期。
    懐かしい・・。

    はい、この日は特に素敵な一日でした。

    あっ、畏れ入ります。なんだかんだいって文章力では、おーじに敵いませんよ。
    毎回、観ていない劇に対して、一つのもれもなくコメントを書いてくれるのですから、その想像力と理解力、文章力には頭が下がります。

    さくら、そろそろ満開ですね。今年も桜を愛でる時期がやってきて、感無量です。
    春、それは出会いの季節でもあり別れの季節ですね。
    さくらさく・・さくらちる・・季節はめぐり、さくらさく。



    2009/03/31 00:20

    多感で不安定な思春期の情景をうまく描いてますね・・。

    長じて社会に出れば、自分は自分、周りとの協調だけでなくそこに自分の折り合いをつけて生きて行くすべも覚えるのだけど、とかくあの頃は仲間外れになることを一番恐れる・・。

    大人になれば色んなしがらみでそうも簡単にいかないところを、純真な世代ゆえあっさり自分自身の命も絶つ・・。

    脚本が良くて演出も見事であれば、作品としては文句なしでしょうね・・。
    素晴らしい時間を過ごせたようで良かったです・・。


    それにしても・・・。
    相変わらず、その場の情景が浮かんでくるような詳細なレビュー、素晴らしい文章力です・・。
    特に自殺の場面、比喩のプールの部分で、読んでいて思わず戦慄が走りました・・。


    追伸の部分・・。
    満足感と笑み崩れる表情が思わず目に見えそうです。
    美しいものを愛で、豊かな充足感で感慨に浸る、人間に生まれた特権ですね・・。




    2009/03/30 12:48

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