SWEAT 公演情報 劇団青年座「SWEAT」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞後に知りましたが、本作の舞台となったペンシルバニア州・レディングって
    「州内でみても貧困率は高い水準にあり、治安はさほど良くない」場所として
    有名で、「人口の37.31%はヒスパニック系またはラテン系」なんですね。

    参考リンク :
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0_(%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%8B%E3%82%A2%E5%B7%9E)

    ジョージ・W・ブッシュが大統領に就任した2000年と、ブッシュが大統領を退任し、リーマン・ブラザーズが倒産した「リーマン・ショック」発生の2008年を行き来し、グローバル資本の荒波に飲まれていくラストベルトの人々を描く骨太な作品です。

    ネタバレBOX

    2000年:

    勤続20年以上となる黒人のシンシア、ドイツ系白人のトレーシー、イタリア系白人のジェシーは、ドイツ系白人男性のスタンが支配人を務める「ハワード・バー」に集ってはバカ騒ぎをする仲良し3人組。

    シンシアの息子・クリスとトレーシーの息子・ジェイソンも仲がいいが、クリスは肉体労働で貯めた金で州の大学に進学する計画を抱いており、ジェイソンにはそれがほんの少し気にかかる。

    そんなバーを中心とした人間関係は、シンシアが管理職に昇進したことから亀裂を生じ始める。シンシアがたった一人の現場上がりの管理職として戦う一方、取り残された形のトレーシーとジェシーは彼女が「取り込まれた」のではないかと疑い、露骨に疑いをぶつけるようになる。

    疑心暗鬼が続く中、工場が人件費削減のため、メキシコ移転するに伴い、労働者の締め出しを実施。差別などに耐え、やっとの思いで管理職に就いたシンシアがその地位を捨てられないことを見越し、工場側はなんと締め出しの中心人物に彼女を指名。これにより、シンシアと残り2人の間の絆は完全に崩壊。

    締め出された労働者がストライキに入る中、工場側は代わりの労働者としてそれまで低賃金の仕事に就いていたヒスパニックを続々雇用。スタンの店に勤めるオスカーもその例に漏れず、よりよい賃金と待遇を求めて、街の人の憎しみもなんのその、工場の仕事にコミットしようとするが、ジェイソンがその前に立ちはだかって…。

    2008年:

    黒人警官ア―ヴィンを中心として、8年の服役を終えたクリスとジェイソンが告白を始める場面からスタート。

    クリスは結局大学進学を諦め、身元引受人となった牧師の下で求職中。すっかり信仰心篤い青年となり、事件を強く悔いる。ジェイソンは顔に入れ墨を入れたり、仲間と森の中でテントを張って暮らすなど、すっかり悪い関係に取り込まれた模様。

    工場は結局封鎖され、シンシアもトレーシーも失業したらしく、前者は清掃と福祉に就きながら、ジェイソン親子を憎み、後者はすっかりヤク中になり、出所した息子に5ドルしか貸せないと言い張るほど零落。2人とも狭くて、薄汚れたアパート暮らしになってるのが切ない…。

    アーヴィンの説諭で、2人は過去にけりをつけるべく、バーに向かう…。

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    これ、恐ろしいな、と思うのが、「労働者」と言っても、

    トレーシーとジェシー:長年街に住み、工場などの手仕事で稼いできた親世代を尊敬しつつも、排除されつつある。

    シンシア:長年街に住んでいる点は2人と同じだが、黒人であるが故に差別を受け続け、この状況から抜け出したいと管理職を希求する。

    オスカー:3人とは異なり、アメリカの永住権は持っているものの、完全な新参者。街の住民が代々就いてきた工場勤務からは排除され、清掃などの過酷な仕事しか就けず軽んじられてきたため、ストライキを好機とみて工場側に接近する。

    …といった具合で、幾つもの見えない「階級」があり、グローバル資本はこうした彼らの事情につけ込むようにして対立を作り、自らは稼ぐだけ稼いでいくという、いわば「支配と搾取」の構造がクッキリ浮き彫りにされていること。

    皮肉なのは、スタンが頭に一撃をもらって障がい者になった後、店を盛り立ててスタンの面倒を見てきたのが、「長年街に住んでいる住民」じゃなくて、新参者と見下されてきたオスカーだったことですよね。グローバル資本の接近も完全に悪いわけではなく、旧いものが消えた後、新しいものも生まれてきている、ということを感じました。

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    2019/03/09 18:57

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