満足度★★★★
鑑賞日2019/02/16 (土) 13:00
仲代劇堂の地図はちょっと判りづらいので、初めての方は時間に十分余裕を持って行ってくださいね。
「野鴨」の舞台を観るのはこれで2回目だが、やはり演出の仕方でかなり違う印象を受けるものだ。
実のところ、前回の舞台では、グレーゲルスとヤルマールの印象だけが強く残っており、他の登場人物はまるで舞台装置のように、物語を進める上での存在でしかないように感じた。ヘドウィックの死さえ、この2人に振り回された不条理なものに思われ、釈然としない気持ちのまま終劇を迎えたと記憶している。
グレーゲルスとヤルマール双方に、嫌ーな苦々しい思いを抱いた。
しかし、今回の舞台は、登場人物個々が非常に際立っており、登場人物全てにある種の純粋さが存在していることに胸を打たれる。ヘドウィックの死も、野鴨よりも大事なものを代償にするといった清廉さをもって受け取れる。そして、暗示される最後のヴェルレの行為にも。
グレーゲルスの理想追及にも、青年期の稚拙さや無謬性が感じられ、偽善や自己正当化を感じることなく、ラストの悲劇を際立たせていたように思う。
よくできた舞台だった。