大安不吉日 公演情報 ウィークエンドシアター「大安不吉日」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     舞台は下手から上手迄ほぼ全面をカバーする平台の中央辺りに出臍を取り付け、観客席は舞台に対して片仮名のコの字の形に設えられている。会場入り口は、客入れ後締め切られ、黒の緞帳が掛かって出捌け口として用いられる。もう1か所の出捌け口は、平台上手奥だ。

    ネタバレBOX


     平台の中央上には、新郎新婦席が設けられ、ケーキカット時には、台とケーキが持ち込まれる。式次第は、通常の婚礼通り、ちょっと変わっているのが、人前結婚式であるということだ。神前婚や、仏前婚ではなく、列席の人々に承認されるタイプの比較的新しい結婚の形だ。従って仲人などという前近代的な仲介者は居ない。新郎・新婦入場後、司会者が式の流れを取り仕切り、2人のなれ初めなどを紹介、スタッフは典礼に基づいて粛々と式を進めるハズであった。
     ところが、指輪交歓、婚姻届署名と進む中、新婦の様子がぎこちない。交際3年でのゴールインなのだが、不自然なぎこちなさなのである。ケーキ入刀で、新婦は終に控室に逃げ込んで内鍵を掛け内部にあったソファーから何から破壊している模様である。会場は、次の披露宴の予定が入って居る為、スタッフは気が気でない。
     新郎は身の置き所が無いのだが、何れにしても何故、新婦がこんな状態に陥っているのか理由が分からない。そこで控室に乗り込んで訳を訊ねるのだが新婦は答えない。然し、新郎以外の恋人は居ないのだと言う。今も新郎以外に愛する男性は無い、と。然し何故結婚式を台無しにしているかについては全く答えないのだ。スタッフらのトリナシもあり、式場に戻った2人だが、会場には、新郎の元カノが来ていて、1週間前に「彼に捨てられた」と言い出して会場内は大騒ぎ。新郎は別れたのは3年半前だと反論するのだが、このような状況下では、女性の主張が支持されやすい。追い詰められた新郎に偶然が味方する。新婦友人として挨拶した女性が落とし物をしたのだが、其処に書かれた名前と出席者名簿の名前が違っていた。矛盾の説明を求められた女性は、自分は、派遣されたエキストラだと白状、新郎の元カノもエキストラであった。偶々、来たら新郎が元カレあったというだけで別れた理由も彼の仕事が忙しくて中々一緒の時を過ごせない寂しさから以前付き合っていた男と再び逢瀬を重ね、偽りを重ねていたのが原因であり、別れたのも彼の言う通り3年半前であったことが明らかになる。
     さて、新婦がぎこちなかった理由であるが、新郎の上司の提案で為された新婦当てゲームを通してその理由が明らかになる。ちょっと脱線するとヌーベルバーグをパクってニューシネマと称しアメリカ映画界は映画思想史に生き残ったが、その後のハリウッドの堕落は凄まじく陳腐としか言いようのないプロパガンダ作品を量産し続けている。が、今作はそんな下司用作品では無い。来週、もう1回公演があるので、それがどんな問題であったかは、観てのお楽しみだが、ヒントだけ書いておく。その言葉は聞いたことがあっても、当事者でない者には、その深刻な苦悩が如何なるものか想像しようともしない。そんな問題を抱えていたのが、新婦であった。新婦が何をどう悩んでいたかについては作中最終部分で明らかになるが、このような立場にあるマイノリティーの悩みを我々マジョリティーにも分かるように具体的表現として本質的な提起をした点で高い評価をしたい。
     但し、本当に小劇場で尺も短い1時間強の作品だから本質論で済むが、尺を通常の2時間にし、小劇場でもキャパが100を超える劇場で上演する場合には、新婦と新郎の上司の苗字の問題や、今作では一切触れないで済ませているサイドストーリーとしての親戚がどう対応するかという門題はキチンと書き込まなければならないことは、これだけ良い脚本を書ける作家には無論分かっているであろうから、更に大きな劇場にも進出して自分の才能を世間にアピールして貰いたい。
     スタッフの対応、音曲の選択、キャスティングの妙、適度に笑いを挟んだ演出、役者陣の演技もグー。

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    2019/02/17 23:49

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