カーテンを閉じたまま 公演情報 Ammo「カーテンを閉じたまま」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    硬質、骨太といった印象で観応え十分な作品。何となくスタンフォード大学のある実験を思い出してしまうが…。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    セットは冒頭、引っ越しの荷造りで色々なものが乱雑に置かれている。中央に丸テーブル・椅子、上手壁には暖炉があり、その傍のソファー。下手に書棚が置かれている。その中で老婦人(前園あかりサン)がソファーに座り引っ越し光景をぼんやりと眺めている。中央奥にはカーテンが閉められた窓がある。すぐにパリでの留学場面へ転換する。

    梗概…サロト・サル(ポル・ポト)とパリの大学で一緒だった老婦人の回想として展開していく。この時代(1950年前後)はカンボジアからフランスへ留学できるのはごく一部のエリートだった。この公演は、1952年のフランス留学中と2006年のカンボジア特別法廷が開かれた年を往還する。
    今年も新たに同国から新入生迎えるため、慣例に従って催しをすることになった。そして選んだのがシェークスピアの「リア王」である。ここでポル・ポトが演出を担うことになり、同級生たちを演出という名目で指導していく。この指導によってポル・ポトの主義主張である思想(共産主義)に洗脳していく。この過程が舞台稽古と称して軟禁状態にし一人ひとり理屈で追い込む。この場面における役者陣の演技は素晴らしい。

    この演出家という立場の利用が何となくスタンフォード大学で行われた実験を連想する。それは心理学者の指導の下に、刑務所を舞台にして特別な肩書きや地位を与えられると、その役割に合わせて行動してしまうことを証明しようとした実験。強い権力を与えられた人間と力を持たない人間が、狭い空間で一緒にいると、次第に理性の歯止めが利かなくなり、暴走するというもの。

    この演出という行為は、一見正当性があるように見えポル・ポトの潜在的な革命家としての姿をくらます=敵に見つからないという巧妙な手段のようだ。主義や立場が人格を形成する、逆にそれらを持ちえない人は人格崩壊に陥りやすい。この件は、現代のインターネット社会で目に見えない情報、それによって人心が操作されるような危惧を感じる。印象的なのは、裁判記録は記憶を残すが、悪夢を断ち切るための記憶も必要だ。骨太作品というイメージは、人物造形と物語の展開、そこに散りばめられた強く印象的な台詞である。

    この公演は照明効果による演出が巧みで、その状況に応じた照度、情況変化に応じた諧調など人物造形に寄り添っているようだ。例えば特定人物の心情(表情)描写のスポットライト、白、朱などの色彩照明による衝撃描写、また窓枠を刳り貫いたような印象付けなど見事。また音響は不安、不穏、不気味などそのシーンを支えている。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/02/17 12:38

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