ふむふむ、1回目ね。 公演情報 劇団ふむふむ「ふむふむ、1回目ね。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     30分の作品3本のオムニバス公演だ。聞くところによると大学2年生、演劇部のメンバーだとのこと。では、このタイトルも悩んだ末に出てきた物なのかもしれない。

    ネタバレBOX

    3部構成のうち奇数回がシリアスもの、2回目の作品が喜劇である。だが、喜劇は、通常のplayより数段難しい。その本質に於いて箍を外さなければならないからだ。箍を外す為には俯瞰しなければならない。然し、若者(現役の年長で20歳、早生まれなら19歳も居る)は通常この年齢で俯瞰できるほどの人生経験を積んでいない。それもあって、小道具やパロディーにかなり比重を掛ける作品になった。尤もサンドイッチの具に喜劇を入れる構成自体は成功している。1話は、天才アーティストの素質を持った少年と器用ではあるが、職人的才能の持ち主である少年の角逐は必然的に天才に軍配が上がる。それを当然の予測として持っていた女教師つまり理解者兼傍の者の傷ついた職人への贖罪と、ここに至って漸く他人を傷つけたことに気付かざるを得なかった天才の負わねばならぬ地獄という宿命を見事に対比しつつ、互いに人間としての道を踏み外さぬ展開にした脚本も、3人の演技(キャラの描き方、間の取り方、呼吸の整え方)もグー。3作目は、為政者の嘘が極端になる戦時下の子供たちへの教育(洗脳)が前提とされる社会で、水先案内人を務める男は、多くの経験から世の中の真の姿を知り、自らが案内する「世界」が多くのフェイクに傅かれ先導されつつあることも知っている。而も魂を未だ失っていない彼は内心このことで悩んで来たのだが、今回案内した若者は、真偽を見分ける能力を持ち、自らも案内人になることを志願する。何故なら多くのフェイクの中にも宙のような真が或ることを理解し、若者自身もそれを更に若い世代に伝えることに希望を見出し得たからである。実際、お先真っ暗な現代日本にこのように強く爽やかで逞しい精神を持った若者が居てくれることを嬉しく思う。
     この劇団の今後に期待したい。

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    2019/01/09 02:12

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