ヒッキー・ソトニデテミターノ 公演情報 ハイバイ「ヒッキー・ソトニデテミターノ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    作・演出の岩井秀人さんが自らの「引きこもり体験」をもとにした作品。

    古舘寛治さんの病欠の代役で、急遽松井周さんを迎えた初日。

    ネタバレBOX

    今は引きこもりを支援する側に回った男と、10年引きこもっている男、28年引きこもっている男と、その家族の話。
    結構ツライ話ではあるが、笑いも多い。笑いの中に哀しさがある。笑いの先にツライ顔が見えたりもする。
    特に花火の音がする「窓」のシーンは胸が痛くなる。「本人」がすぐさま否定するだけに。


    松井周さんを迎えた初日をコペルニクス的解決方法(? つまりなんというか、手に台本を持ったまま演技する!)で乗り切っていた。
    実はノートを見るシーンがあるので、その延長線上にある感じがして、さほど違和感はない。
    それ観てなんか得した気分。

    ただ、前回(2012年版)の古舘寛治さんを観ているので、ついつい比べてしまってはいるのだが。

    今回は舞台上や構成が混乱していたイメージ。
    場面、場面に、きれいにスポットが当たりにくい。
    常に(というか、ほぼ)舞台の上には全登場人物がいて、セットというか装置類も同じ机やイスを動かしたり、積んだりする。

    その混乱は、完成度高いもの、完璧なものとは違うところの面白さに出た。
    心がざわつく内容だから、それが作品にプラスに働いていた。

    岩井秀人さんの、自分が言いたいこと、表したいことを上手く表現できない、なんともな、アノ感じが上手すぎる。「自分が人からどう見られているのか」を見ているような気分になった人も多いかも。チャン・リーメイさんのクールさが際立つ。能島瑞穂さんのお母さん度の高さは、自分に向けられているようで、見ていてツラい。

    古館さんには陰が濃かったので、自殺してしまうのには「えっ」と思ったが、なんとなく納得できてしまう(自殺に納得できるというのもヘンだが)。
    松井さんは、道案内もレストランでのオーダーもどこか楽しそう。
    なので、自殺には「えっ」となり、さらに「なぜ?」が出てくる。たぶん自殺してしまう人の周囲では「なぜ?」が浮かび、後付けで理由が探されるのではないか。そういう意味においてリアルだったのではないかと思うのだ。

    最初の『ヒッキー』が2003 年ということは、今年で15年経っているということ。つまりその2003年に引きこもっていた20代は30〜40代になっていることになる。
    今回の作品で28年引きこもっていた次郎には年老いた父と2人暮らしだった。
    ということは、今後「引きこもり+介護」が出現する可能性も出てくるはずだ。いや、いろいろな事件を見ていると親の年金で暮らす老人とその年老いた子どもというパターンも見ることができる。

    もしこの作品の続編があるのならば、次はその世界を描くことになるのかもしれない。『男たち』と『ヒッキー・ソトニデテミターノ』の中間を埋めるような作品だ。

    そのときには、彼はそこにいるのだろうか。

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    2019/01/07 04:26

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