氷の中のミント 公演情報 穐山企画「氷の中のミント」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ■約85分■
    「あの人にはあの場面でああ言いたかったのに…」とか、「あんなことを言っちゃった私はあの人にどう思われているだろう…」とか、日々の対人関係における作者の心の葛藤を題材にフィクションに仕立てた、言うなれば私演劇。この種の劇は閉鎖的で自己満足に引きこもった愚作になりがちなものだが、心の葛藤を表現するためとあるアイデアを盛り込んだり、セリフに綾をつけて可笑しみを出そうとしたり、音響・音楽や照明を巧みに使って場面場面にバリエーションをつけたり、本作の作者は届ける努力を怠っておらず、楽しく観られた。
    また、この種の劇に透けて見えがちな“繊細なわたし自慢”とでも言うべきものが感じられないところもいい。“繊細なわたし”は作者にとって重荷でしかなく、対人関係をいかに滑らかにしていくかはセンシティブな作者にとって切実な問題であり、一番の関心事。だから劇にするのだ、という率直な姿勢には好感が持てる。
    アート寄り演劇の作り手には自己愛や虚栄心の強いクリエイターが目立ち、自分をお高く見せようとする傾向がうかがえるが、本作の作者にはそんな悪風に染まることなく、今後も虚飾やハッタリ、こけおどしに頼らない、己に忠実で背伸びのない劇作品を作り続けていただきたい。

    ネタバレBOX

    本作で役者たちは地のセリフを言うのみならず、口にはできない思いを、手首に取り付けた小型メガホンに“心の声”として吐き捨てる。これが、心の葛藤を表現するために用いられる「とあるアイデア」。
    表では綺麗事を言って心の中では毒づく、というのは漫画などでも頻用されるパターンだが、本作が面白いのは、棘のある本音だけでなく、「大好き!」「ありがとう」など、気恥ずかしさのあまり呑み込んだ好意的な言葉までもが心の声としてしばしば表現されるところ。そこはちょっと新鮮に感じられた。

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    2018/12/16 20:11

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