THE PILLOWMAN 公演情報 Triglav「THE PILLOWMAN」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2018/12/12 (水) 19:00

    座席1列

    ハロルド・ピンター作品で旗揚げした次作では、マーティン・マクドナー作品。劇団の嗜好性あるいは志向性が判る(というと「判ってたまるか」というくらいに骨太な)選択です。
    その上で、翻訳を劇団員自らが前作同様に行っていることに、強い作品への愛着と敬意を感じます。

    マーティン・マクドナー作品は、長塚圭史氏や現新国立劇場の芸術監督である小川絵梨子氏の出世作であり、森新太郎演出もあったり。これら日本を代表する若手(?)演出家の舞台に立つのは、錚錚たる顔ぶれの役者陣。
    最近では世田谷パブリックで最新作「ハングマン」が上演され。まさに日本演劇史に強い影響力を持つ作家です。

    そうした背景の中で、今回の舞台は見事!!!
    称賛しかありません。

    まずは小劇団の宿命、限られた短い時間の稽古で迎えたであろう初日、噛むこともなく淀みなく進む舞台。明治大学でシェイクスピアプロジェクトを中心に揉まれてきたとはいえ、設立わずか1年の劇団舞台としての完成度は高い。他の大御所のマクドナー作品の舞台と比しても、そう遜色ないように思われる。

    そして3幕の長尺作品なので、過去の上演記録を見ても、長いと3時間超、短くても
    2時間をゆうに超える作品であるにも拘らず、2時間ちょうど(それも、前説で宣言したように時間がぴったり)にまとめあげたのは、やはり演出、の妙というべきだろう。
    それも、短縮したり省略したりすることなく、狭い劇場を左右に区切り、その上、場面転換するところを、うまく紙のシルエットで観客の想像力に働きかけることで、テンポよくストーリーを摘むんで行く。舞台監督を置き、演出の意に沿う工夫を考案したことも大きい。

    ネタバレBOX

    ストーリーに関してはWikiなどで詳しく書かれているので、追うのは止めておきます。
    ただ、この作品のラスト近く、助かった少女へのカトゥリアン、トゥポルスキー、アリエルそれぞれの反応が観客に多様な感情を生み出すのは確かで、その後の余韻を深いものにします。
    とくに、トゥポルスキーが、カトゥリアンが真実の自白をしなかったことをアリエルに質問する件。トゥポルスキーは、カトゥリアンが真実を述べなかったことを理由に、小説の原稿を残すという約束も保護だと主張する。
    それまで息巻いていたアリエルが、蛇に睨まれた蛙のようにおとなしくなる姿に、観客は一堂に祈ることだろう、この兄弟たちに僅かな幸せをと。
    その幸せが、カトゥリアンが銃殺されるまでの猶予時間10秒が反故にされた代償、あるいはアリエルの贖罪意識だとしても、そこには僅かな福音があったことに安堵した。

    ひどい未来から逃れられるよう子供たちに自殺を促すピローマンの物語は、カトゥリアンとミハイルの抗いによって、小説として結実したという福音。

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    2018/12/13 16:19

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