Gloria 公演情報 芸術集団れんこんきすた「Gloria」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     ドイツ出身の名女優、マレーネ・デートリッヒの前線慰問を巡る物語だ。ナチスの実効支配に抗してアメリカに渡り、連合軍の広告塔としての勤めを最後まで為した壮絶極まる、パトリオット(愛郷者)の半生を描く。
     殆どの人は、事実や真実ではなく、洗脳の為垂れ流され、受け身に生きていれば皆と同じ視座で生きられる嘘を目指している、ネタバレに書かれたようなことではなく。何となれば楽だからだ。(2度目追記2018.12.9 02:52)

    ネタバレBOX


     真のパトリオットは時として、祖国の誤ったイデオロギーを糺す為の敵となる。無論、本人に対する裏切り者プロパガンダや、本人のみならず、家族、親族眷属に至るまでが生まれた国の政治体制如何で訴追を受けかねない。それを世界的大女優がやってのけた。広告塔としての効果は頗る高い。賢い女性であったから、当然その程度のことは読んでいる。その分、彼女の精神的な苦痛は並大抵ではなかったであろう。この厳しく凄まじい人生をオープニングのサスが的確に表現している。見事な演出と照明である。
     デートリッヒ役は、座長の中川 朝子さん、出ずっぱり、膨大な科白を英語やドイツ語の歌詞を交え、地声で歌うチャレンジ精神が潔い。脚本は、定評のある座付き作家の奥村 千里さん。今回もデートリッヒに関する膨大な資料を読み込み、エッセンスを抽出、本質的な作品に仕上げている。演出も彼女だ。士官や参謀クラスを除き、登場する一般兵士を演ずるのは、ドイツ軍、アメリカ軍とも各々1人だけだ。だが、演劇には暗黙の約束事がある。今作のように本質を各々1人に集約して全軍を表す場合、エキストラ等を使ってある程度の人数を揃え、科白のある役者数で全体の傾向を示す場合である。舞台上に何十万の兵士を出す訳にはゆかないから当然のことなのだが、1人に集約するには、各軍の特質及び本質を不自然にならないように埋め込まなければならない。この点でも科白表面読み・裏読みが、観客の知識や想像力の多寡に応じてきちんと受け取れるようになっている点は流石である。
     デートリッヒの科白の中にGIが最も勇敢な兵士だと称賛するシーンがあるが、これは彼女がドイツ人で徹底したパトリオットであり、先に挙げた理由などから引き裂かれた精神が発した必死の言葉と取る。而もアメリカは現在の形になるまで国境線を持たなかった。ネイティブアメリカンを騙しつくし、殺しつくし、メキシコに正義など微塵も無い戦争を吹っかけて土地を奪って来た野蛮な国だ。現在、イスラエルが国境を持たないのも、アメリカを手本にしているのだし。
     プロパガンダにした所で、西部劇に矢鱈に出て来た、頭皮を剥ぐから「インディアン」は残虐だ、という話も事実は全くアベコベである。アメリカは自分達の土地とする為にネイティブアメリカン狩りをしていた。そして殺した証拠にネイティブアメリカンの頭皮を剥ぎ、成人男性、女性、子供各々の対価を決めて持参した白人に賞金を支払っていたのである。余りに理不尽なことをされたので、ネイティブアメリカンも同じ頭皮剥ぎをし返したに過ぎない。イスラエルのプロパガンダもアメリカ同様えげつないものだ。が、閑話休題。今作は、独・米中心の話だからにゃ。ただ、自分がここでこのようなことを書いたのは、作家がデートリッヒの科白として「GIが最も云々」という科白を書いた時に随分悩んだ、という話を聞いたからである。当然だろう。GIも半端ではない酷い行為をしていた。
     ところで、今作を今の日本で演じることの意味は如何であろうか? 当時世界中で最も民主的と評価されたワイマール憲法を持ちながら、世界で最も恐れられたファシズムに突入していった歴史は、他国のものだろうか? アメリカ人の中で良識を持つ人々が時折羨ましがるように、現日本国憲法は民主的である。だが、安倍政権以降、これも危殆に瀕しているのは、現天皇家の反応を見ても明らかだ。このような視点で観ることもできる作品である。観客としてどのような意見を持つのも自由、組するにせよ、そうでないにせよ、こんなことも考えさせる作品、観ておくのがよろしかろう。

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    2018/12/06 04:12

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  •  更に

    2018/12/09 04:46

     更に追記しておきました。
            ハンダラ

    2018/12/09 02:52

     ほんの少し追記しました。

    2018/12/06 12:02

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