贋作 桜の森の満開の下 公演情報 NODA・MAP「贋作 桜の森の満開の下」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    悲恋物語と日本国家成立までの残酷物語という、2つの物語が同時並行で
    絡み合うさまが巧みだなと。手塚治虫『火の鳥 太陽編』を思い出しました。
    ラスト、妻夫木さんの悲しみように、こちらまで涙が止まらず。

    ネタバレBOX

    物語は、耳男、マナコ、オオアマの3人の若者がヒダの国の王の
    娘・夜長姫に捧げる像を作るべく、ヒダの国を訪れるところから
    始まります。

    夜長姫に翻弄されつつ、耳男は像を彫り始めますが、その最中、
    オオアマの正体が帝に弓を引いた大海人皇子だということも
    判明。姫に像を献上した後、耳男は姫と一緒に登った鬼門の
    てっぺんで大海人皇子に率いられた軍勢が謀反の戦を起こすところを
    目撃します。

    このシーン笑ってしまうのが、大海人皇子の軍勢も、相手と交戦する
    軍勢も必死でやり合ってるのに、門の上の2人は何だか入り混じって
    よく分からない人たちが門の周りをぐるぐるぐるぐる回ってるだけに
    しか見えてないところです。

    「あらゆる戦争なんて、端から見てたらそんなもんだよ」と冷めた
    調子で言われてるみたいでしたよ。

    その後、大海人皇子が勝利し、天武天皇として即位した後の治世で
    耳男は言いがかりのような罪を着せられ、ヒダまで追われることに。
    まるであやかしの物のようについてきた夜長姫が死を宣告するとともに、
    耳男を追跡してきた兵士たちがヒダの人々を次々に討っていく。その
    様子を見ながら、大海人皇子が「これで○○の方角の境が定まった」と
    冷ややかな顔で宣言する一連の流れ。

    さっき触れた『火の鳥』の「黎明編」、「ヤマト編」に書かれている
    ことなのですが、まつろわぬ者たちの殲滅が、同時に国家のグランド
    デザインの成立につながる話、恐ろしいな…。ヒダって、明らかに
    東北のクマソやエビスを下敷きにしていて、ヤマト政権のそうした
    人々に対する侵略を匂わせているんだろうな。

    最後、耳男が人々の死を願う夜長姫を殺害し、死体の前で「姫さま…」と
    呟きながら、嘆き悲しむ様に涙がこぼれた…。そのそばを、天武天皇の
    行幸の列が通り過ぎていくことに、こうしたヒダの歴史とその物語が
    もはや全然国の「正規の物語」と交差しないことが明らかになる中、
    耳男がひとり寂しげにたたずむ中で幕。

    美しさと残酷さ、切なさが入り混じる、あっという間の2時間でした。

    膨大なセリフと数多くの場面転換を含む作品なので、原作を確認
    しておくのがいいかも知れません。
    http://ur2.link/NOHB

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    2018/11/24 17:42

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