ジャン・ジロドゥの思い出 公演情報 劇団つばめ組「ジャン・ジロドゥの思い出」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     モリエールにそのような批評的視点があったとは、無学な自分などは与り知らぬことであった。

    ネタバレBOX

      「パリ即興劇」については、当パンの説明にこうある。元々、モリエールが「17世紀ヴェルサイユ即興劇」という作品を書き、彼自身を含む劇団のリハーサルを出演者が実名で演じた作品。このプロットを借りてジロドゥが80年前にアテネ座に書いた作品が、ジュベ率いる劇団員たちが出演して上演された。今作は、ジロドゥのこの作品を現代日本に蘇らせようとの試みだ。
     内容的には、アートを実践する者の精神とそれを保障する文化的・現実的条件VS政治・官僚システム。換言すれば自由対管理ということになろうか。原作や今作の底本を当たっていないので何とも言えないが、仮に安堂信也訳のままの科白で上演されたのだとしたら、現在の日本の状況とは、矢張りちょっと異なる感じは否めない。折角、上演するのであれば、潤色部分で最も大切な日本現代政治の虚妄、嘘についての批判をキチンとすべきであったろう。そういう意味で現代日本に対する認識が甘いと言わざるを得ない。
     「ベルラックのアポロ」
    原作者のジロドゥは、フランスのグランゼコールの1つÉcole Normale Supérieure出身。因みにグランゼコール出身者は、卒業後すぐに大卒の4~5倍の初任給を得る超エリート。ENS出身者は、サルトル、メルロポンティー、フーコー、シモーヌ・ヴェイユ、デリダ、ピケティー、
       ロマン・ロラン、ブルデュー等々、枚挙に暇が無いだけあって、今作でもヨーロッパの文化的伝統をギリシャ彫刻からロダン、孤独の深さを示す為に“猫も居ない”と書いたボードレールを下敷きに、また楽曲では「革命」を書いたショパンの曲も用いながら上手く鏤めながら、短い作品に深みと広がりを与えている。
     今回の演出では、ラストで「パリ即興劇」の冒頭を持ってきて使っているのだが、これでは「ベルラックのアポロ」という作品の持つ余韻を消してしまって勿体ない。政治や官僚機構齎す管理や擬制の欺瞞を周知徹底させる意図かも知れないが、そうであれば「パリ即興劇」の潤色でそれをもっと徹底的に出して欲しかった。


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    2018/11/19 16:12

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