恭しき娼婦2018 公演情報 新宿梁山泊「恭しき娼婦2018」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2018/10/11 (木) 19:00

    座席1階G列20番

    まず、タイトルなのだけれど、フライヤーや新宿梁山泊blogには「恭しき娼婦」とのみ書かれているが、こりっちや東京芸術劇場HPでは「恭しき娼婦2018」と書いてある。
    この不統一は何ぞや。
    フライヤーを見て行こうと思った私は、原作サルトル、翻訳芥川比呂志という記述と相俟って(多少の翻案はあるとしても)、このもはや古典劇をそのまま鑑賞できるものと思っていた。
    だから、舞台の進行が当初から???になってしまい、最後自分なりに得心するまで、この話は何のこっちゃとなってしまった。これからご覧になる方には、冒頭から振りまかれている様々なパーツ(セリフや舞台装置)に気をつけながら観劇されることをお勧めする。20世紀初頭のアメリカの話でもありませんし、黒人も出てきませんから。

    それで最後まで???だったとしても(案外、ご年配な方が多かったし)、一見の価値があるのは、出ずっぱりのサヘル・ローズ。
    彼女の肢体、動き、仕草、ポーズを観、軽快で艶のあるセリフを聞くだけでも(少なくとも男性は)お金を払って観に来たことを後悔はしないと思う。
    ちなみに、サヘルの役名も「サヘル・ローズ」で、彼女がイラン出身であることを暗に前提としている。

    舞台はヨーロピアンな調度のアパートの一室。そこで、この話はてっきり欧米(原作ならアメリカの片田舎)の話だと思うのだが、実は日本(サヘルが裸足で掃除を始めるところで気が付かないとね)。そして、まず???が入る。(ネタバレへ)

    ネタバレBOX

    サヘルが掃除を始めるのだけれど、掃除機がコードレスなのである。

    実はこの話、最近舞台で流行り?(「1984」とか「華氏451度とか)のディストピア物なのである。それもかなり近未来、おそらく今から10年程度の。

    娼婦サヘルに甘言をもって近づいた男は、実は彼女が目撃した電車内で朝鮮人を刺殺した男の従弟。従弟を助けるために、偽証を求めに彼女と関係を持った。

    さて、ここから出てくる事実に関する言葉と、架空の言葉。
    関東大震災時の朝鮮人虐殺(直接「亀戸事件」とは言わないが)や、満州国の五族協和。
    一方で「第二次朝鮮戦争」や、大量の難民・移民の受け入れ。

    この物語の舞台は、山口県。(本州の片隅と言っている)
    男の大叔父は、70年変えられなかった日本国憲法を変えて、戦争ができるまともな国にした歴史上偉大な人物。そう、安倍晋三のこと。男の名前は彼から一字もらって「シンゴ」(晋吾?)と言い、拘留された従弟は「シンノスケ」(晋之輔?)というらしい。
    シンゴの父は、有力な地場の国会議員。

    アジアからは大量の難民・移民を受け入れているが、彼らは富裕層に安く働かせられる召使となっていて、特に朝鮮人は「チョン」と呼ばれ差別されている。
    大量の朝鮮人受け入れをしてやりながら、彼らは関東大震災時と変わらず、いつも盗みや悪事を働くことしか念頭にない、というシンゴ。

    相手が朝鮮人であれば、日本人の罪は隠蔽されるのが当然で、朝鮮人が罪を犯したという風評だけで、集団リンチの対象となる。

    サヘルの部屋に匿ってほしいと訴える(ここに、サヘルがイラン人という前提が通底されているように思われる)朝鮮人はこう訴える。
    「町で見知らぬ人同士が話し込むと恐ろしいことが起こる」(集団リンチの前触れ)
    「日本人はあることをないことに、ないことをあることにする」(ある=亀戸事件やもしかしたら慰安婦問題、それとない=朝鮮人の犯罪や劣等性)

    そんな10数年後の日本。まさにディストピア。

    ラストは、サヘルの部屋に匿われた朝鮮人は逃げおおせ(このことをサヘルに伝えるシンゴは多少の悔恨の情が見れるのだが)。
    シンゴはサヘルを愛人として囲うことを申し出る。(ここも現代という意識からすれば、彼女がイラン人ということと通底していないか)

    でも、サヘルがシンゴを銃で撃たず、首を絞めて殺すのはなぜだろう。

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    2018/10/12 13:46

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