蛇と天秤 公演情報 パラドックス定数「蛇と天秤」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    絶対的なモラルの世界に生きる人間たちが現実的(相対的)な対応を迫られて右往左往する中に、身近な社会の本質が覗いてくる,、、、。野木萌葱の作品はまとめればこれ一筋で、じりじり世評を伸ばして20年、今年は年間を通して風姿花伝で開けるという企画に応じられるところまで来たが、目先は変わっても、作りはまたか、と思う作品も多い。だが、絶対と相対のずれのつかみ方がいいので素材が代われば、つい楽しんで見てしまう。ナンセンス・コントのようなところもあって面白いのだ。
    今回は、患者に直接接する医者(助教授・講師・若手医師)と、間接的な薬学に携わる製薬会社の新薬開発・販売員(開発研究者・営業担当)を巡るドラマである。医者の方には大学病院のヒエラルヒーがあり、製薬会社には直接患者に接しないと成果が見えないもどかしさがある。ともに医学は生命を守る、失敗は許されないという絶対的命題があるのに、現実は必ず失敗はある。、、、その狭間で個人のモラルはゆらぎ・・・・という話だ。
    この作者は社会ダネを素材にこういう行き違いのドラマを面白くかけるが、社会のドラマの本質的な核心には踏み込んでいかない。日本の劇作家で言えば、久保栄からはじまり、木下順二、宮本研、福田善之、斉藤憐、と野木と同じような素材を扱った人たちはたくさんいるし、森本薫、とか北条秀司のような作家でも結構現実社会を素材にして、成否は置くとしても、いい芝居を作っている。彼らと野木が違うのは、上記の作家たちは素材の本質に迫ってそれを登場人物に反映しようと力を尽くしているが、野木は現実処理のモラルを問うというあたりで両論併記で納めてしまう。今回のドラマで言えば、医薬分業というのはどうなのか?というような問題の核心には触れない。誤診の内部告発と言ったような面白そうなところだけ拾うところがイマ風である。 (一方では現実世界を扱っているのに素材の扱いが乱暴なところも散見する)
    もう一つ、今回大きく変わったのは、小劇場が劇団の枠を外し、実質的にプロデュース公演になったことである。事情があるだろうから外からはあまり論評できないが、舞台面だけ見れば、これは成果を上げた。その組み方も花組芝居、大人計画、新国立の研修生出身、芸人風、といろいろな出身者で、その組み方もどこのプロデュースにもない顔ぶれを集めていることだ。柄だけを見たのではないかと言う危惧もなくはないが、全員期待に応えて健闘である。

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    2018/10/11 00:19

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