戦国夢想曲 花連鬼生伝 公演情報 夢劇「戦国夢想曲 花連鬼生伝」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     かなりの名君だったと噂される秀頼を現代風価値観でアレンジして見せた作品と言えよう。彼を演じるのが女優というのも面白い。

    ネタバレBOX

     板上、中央奥は障子で両側に開く。障子から奥の空間は天井面が踊り場を構成し、この踊り場へ左右から上がれるようにシンメトリカルに階段が取り付けられている。階段は一段目を内側に、上る程に側壁に近づく配置。障子手前に平台を置き、階段下の地面を表すかのように正面平台から客席へ延びる部分を台形に抉るように形成した平台がその左右にこれもシンメトリカルに置かれて、本来の板面から一段高くなっている。客席と板の際には、側壁から各々目隠しが延び、袖を形成して、これも出捌けとして用いられている。
     衣装は、かなり簡略化され、各々の大将である秀頼も秀忠も鎧はつけていない。真田の有名な緋縅も信繁が胴をつけているだけである。音響は少し贅沢をして、和太鼓などは、生演奏だ。
     戦国三部作と題された作品のうちの一作。大阪夏の陣、冬の陣を通して徳川と豊臣との確執を描くと同時に秀頼と家康の孫に当たる秀忠の娘、千姫との夫婦愛、茶々と乳兄弟の大野 治長の許されざる恋を中心に、話が展開する。
    天海、家康の治世の為には私情を殺して歴史の趨勢と状況を見極め、己をその歴史的必然に投ずる非情な生き方に対し、秀忠、茶々、秀頼、千姫などは、個々のメンタリティーやパトスに殉じ、大義には距離を置くという価値観を前面に出しているわけだ。この対立軸が、現代日本の昭和世代と平成世代の対立軸と重なると自分は観た。その意味で、今作は、平成史観に引き付けた価値観を前面に出して歴史を洗い直していると言えよう。この視座が、今作を通常の史劇とは異なるものにし、大阪城落城後の後日譚を余り違和感のない物として観客に届けている。無論、これはこれで興味深い視座であり、観る者の心を撃つものもあるのだが、演劇はそれだけでは十全に機能しない。登場人物個々のパトスを生きたものにする為には、それを演じる役者個々人が役を生き、個々のキャラを立てなければならないからである。配役によって観客に好まれ易い役、憎まれ易い役はあるのだが、それは兎も角として役者個々人キャラの立った良い演技をしている。

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    2018/09/16 03:39

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