二代目なっちゃんの愛人。 公演情報 なかないで、毒きのこちゃん「二代目なっちゃんの愛人。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    初の劇団。小さなOFFOFFの劇場全体をフル活用。客席から登場するわ、走り回るわ、客を巻き込むわ、ステージ右側の楽屋スペースも開陳するわ、背後のオペ室の小窓からも台詞が漏れるわ。呆れた笑いに顔が引きつった。
    前半(時間にして1/3程度か)の四人芝居はマンションの一室、蒲団のある風景。一組のカップルと女の親友の同居生活という危うい設定。リアリズム、三浦大輔系の赤裸々・酷薄なワールドは引き込むものがあったが、後半は反転と言っていい程様相が変わる。

    ネタバレBOX

    展開が大詰めを迎えた時「作・演出」として登場した鳥皮ささみ(事実この劇団の作演出でもある)が「今回はここまでしか書けなかった事を詫び、ここからはアフタートークとさせて頂きます」と滑舌よくかつ丁重に必死の面持ちで言う。この変わり目の瞬間去来したのが(結果的に後半とは無関係だったが)『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』。一度やらかして禁忌であったはずの「姉の素行を面白がり暴露する漫画」を、衝動を抑えられずに実は描いていて出版も決まってしまう妹のたたずまい(女優を目指し醜く見栄を張り、不安を塞ぐかのように「前科」をネタに妹をいたぶる姉に対し、最後に妹が勝利する図)。鳥皮ささみの声がこの妹(舞台のそれか映画のそれかは忘れた)のに似ていた事もあるが、妹が見ている世界の風景が絶望に満ちていて、この芝居の前半に展開した世界に通じるように見えたのだ。
    が、「アフタートーク」に移って以降、この前半の芝居は殆ど無かったものになる。ハプニング続きで劇場内はてんやわんや。元劇団員の父母が喪服姿で客席側に座っているのがアフタートーク以後(客電が点くので)目に入り、いつどのタイミングで登場か、森田ガンツ・・と楽しみに待つ。この疑似現実のハプニング芝居が、本域で限界ギリギリを演じる役者によってどうにか成立する、その挑戦をやっている事が面白い。オチには多少の期待を持ちつつ、奇妙な展開を見守るフシギな時間だった。
    作者はこのハプニング芝居で前半芝居を飲み込み、後半を軸にドラマとして着地させようとする。それなりに見せる展開とラストではあるが、前半の芝居が上出来なだけにこの時間が茶化しの対象で終わるのはやはり座りが悪いのだ。というか決定的に破綻している。
    もっとも、破壊的表現には「従来を疑い未来を拓く」言わば前衛の志がある、との捉え直しが可能(その余地を残しつつ観劇していた)。作り手の意図するしないにかかわらず。
    ただ言えるのは、前衛の志を想定してもあながち無理でない鋭さが芝居の随所にあり、虚実ないまぜのスリルが笑いを引き出すポテンシャルが舞台に充満していたのは確か。
    感動はなく感心・感服の部類だが、次作への期待は膨らむ。

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    2018/09/08 07:34

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