スマートコミュニティアンドメンタルヘルスケア 公演情報 ホエイ「スマートコミュニティアンドメンタルヘルスケア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    初演をみたときの正直な感想は、ノリで一晩で書いて推敲せずに出した代物、だった(うん、よく出来たと思う、と山田氏はパンフに書いてたが盛ってるな~と思った)。今回、作品が持つ良さがよく出ていた。会場が春風舎からアゴラに変って劇場が持つ「枠」の堅固さからか、大揺れな中身も安心感を持ってみられた事、また恐らく個々の演技もかなり微調整され「作為」の跡があった。他に見られない言わばぶっ飛んだ世界だが、しかし作る側としては骨のない軟体動物でなく、飽くまで脊椎動物な作品でありたい願望が漂っていて、受け止め方はやはり難しい。

    ネタバレBOX

    終演まで突き進むと、初演にあった不安定感が残った。終盤で厳しくなる。
    過疎地の設定か、クラスに1~3年生が混在し、3年生は卒業するから中学だが雰囲気は小学生、という点がまずある。まあ大人が子どもを演じてるし、とりあえずそこは良い。「子どもの世界」の身勝手さや残酷さ、影響され易さ、そして個々のキャラ、男女の役割の違い、学年を超えた力関係の序列、等々よく書かれていてキャラ的な破綻は小さい。
    ただ、「子どもの世界」に、やがて大人(1名のみ)も参入するあたりで不条理に突入、混迷する。
    大人とは1年目の女性教師。冒頭にこの教師のハチャメチャな言動が展開する。「○○、sey!」と生徒に復唱させる内容は、今度の卒業式は対面式であるべき事、君が代日の丸反対、中華人民共和国ラブ。言いたいだけ言って去った後「自習時間」となり、ここで「子どもの世界」が展開する。確か中盤でもう一度教師が登場してまた自習となり、最後に三度目の登場、という作りだったと思う。
    若くして女性の左翼教師、居なくなった校長とどうやら不倫?のような仄めかしもある。左翼を叩きたいのか?と訝るようなキャラで、今時君が代日の丸反対教師がこの軽いノリで存在し得るかどうか、逆にイイ先生が国旗国歌で締め付けられている状況ではこのキャラは皮肉にならない、というのも混迷の一つ。だがそれも飲んでみよう。
    話の主流は子どもの世界での「超自然の存在」を媒介しての権力闘争、共闘、であるのだが、どうやら「超自然」は生じてしまう(もしくは強烈な共同幻想か)。どうにも手に負えない状況で教師が登場し、原因を「心」の存在に求め、「心をなくす儀式」を行なう。これによって大人(教師)が子どもを配下に置くと、子どもは「心をなくした人間」の言動を始める。ここで判らなくなる。
    「心をなくす」儀式によって、本当に心(人間的な心、に限定しているようだが)がなくなってしまった、と見せようとするのか、「心をなくす」自己暗示なのか・・前者なら不条理で、後者ならリアルの範疇だが皆が同じ「心のなくし方」を示すのは無理がある。それは、教室に飾られていた「エライ人」(校長か、首相か)の写真を教師の指示で(机を三段に重ねて)取り外した生徒を、机の塔の上に放置したままにし、「助けて、怖い」と言う彼に対し、「何言ってるの?僕は怖くない」「だから言ってるだろう、僕は怖くないんだ」と、口を揃えて言う。「心をなくした状態」とはこういう事だと、作者は説明するわけである。
    この言動にはリアルを捨象した飛躍があって、作者の「意図」を直接話法で伝える(切り取られた言葉そのものを観客に投げつける)荒技を使ったように感じさせる。ところが、では何を言いたいのか?と言うと、わからない。(せいぜい、左翼教師は非人間性を流布させる張本人だ、くらいしか残らない。)
    何気なく仕込んだ伏線を回収しようとしただけなのかも知れないが、いずれにしても盛り込み過ぎで最後は座礁したように見えた。元々ハチャメチャな芝居、それも一興・・?とも言いづらい。

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    2018/08/26 06:52

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