満足度★★★★
いつも感じるのは大学劇団との間にはだかる断絶だ。
高校演劇というのは10代後半が おおよそ占めると思うが、同年代だってプロダクションに 所属して舞台に立つ人もいる。その意味では過ぎた「蒼さ」を 高校演劇に反映するのは間違いである。これは持論だ。
だから、中学生や高校生、大学生が個人で集結し、劇団をプラットフォーマー=媒介役とし成り立たせる本作は意義のあることだと思っている。ようするに、高校演劇という見本を学び実践するのでなく、高校生が学び実践する、という過程だ。
その上で観たのだが、細かい話はやめる。
役者でいえば山田が印象的だった。彼はショートストリーズで作も担っているが、理路整然とした話ぶりは むしろ高校生じみていない。大人そのものといった感だ。別の機会に譲るが、サイコパスの役などを非常によく演じてくれそうだ。
『アインブラットの本』は時系列で観なければならない、少々厄介な作品だ。そのために大人の俳優が曜日をたしなめたボードを用意する必要がある。しかし、それこそが「肝」だ。物語の展開を読み解く最上の装置となる。
ネタバレしない程度に言及しよう。高校生たちの恋愛事情だ。役柄は容姿からいってもリアリティを重視しており、たとえばサッカー部員なら実際にヘディングシュートを決めてくれそうである。
こうした設定の場合、高校演劇だと対象者が同学年となるから おおっぴらげにしがちだが、リアリティを追求していくのが本作だ。それが恋愛にして どこか心の温まる時系列となる。