高額時給制アシュトレト 公演情報 演劇企画 heart more need「高額時給制アシュトレト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2018/08/01 (水) 19:00

    まず、このタイトルを見て、舞台に対する興味は
    「アシュトレトとは何か?」
    「高額な仕事とは何なのか?」
    そして、仕事内容が判ると「なぜそのような仕事が必要とされるのか」という順で起きてきます。→ネタバレ

    その他で。

    まずは初日に関わらず、舞台進行に淀みがなく、何と言っても誰一人噛むことがなかったこと、
    舞台上で並行した芝居がなされるときでも、役者の移動が適確で混乱を招かなったことは、最近の経験から称賛したいと思います。
    最近の小劇場の観劇では、噛み噛みは論外としても、ここ一発の決めのところで噛んだりすることでかなりストレス続きだったので。噛んでも、それが登場人物の動揺に見えたり、何の支障もなく進行することもあるので、やはり、観客が気になる「噛み」は、役者の集中力や習熟度の問題ではないかと思います。

    今回はストーリーに興味を持って観たので、役者さんについては全くノーマークでした。(この劇団だから観る、この作家だから観る、この作品だから観る、と場合によって役者さんへの関心度は変わりますが)
    そうしたら、開幕早々、いきなりピアスをしたイッチャッテいるお兄さんが登場。ちょっと派手でヤバ目な感じ。強いオーラで、どこかで見たよなあ、どこだっけと思っていると、チームまん〇の熊野隆宏さんでした。この方、本当にどこか危ない雰囲気持っています。
    それと、長戸勝彦さん演じる佐世、おっとりした雰囲気とタイミングのよいツッコミ、しかし、元〇〇という設定で、怒らせたらこういう人が一番やばいのだろうな、という感じを醸し出していています。この劇のコメディリリーフと「闇」を、スマートに演じていて、評価大です。素晴らしい。

    ネタバレBOX

    「アシュトレト」の意味は、舞台終盤にバイトの主催者佐世の口から語られますが、調べると「豊穣の女神、軍神でもあり、残虐の神、そして悪魔に変異される」ということで、この物語が、女性を中心に進んでいくことは、タイトルに明確に示されていると言ってよいでしょう。

    言うまでもなく、主人公は葦原幸子(さちこ)と高宮幸子(ゆきこ)ですが、女性の殺し屋ということでは、キャバ嬢の佐藤冬美が絡むことで、直線的になりやすい物語りを少し捻らせています。

    ストーリーを一言でいえば、
    何らかの目的で、現代のアシュトレトを生み出すべく高額時給でアルバイトを募るという話です。アシュトレトは女性ですから、男性はアシュトレト候補の訓練あるいは(アルバイトとなれば)研修材料でしかありません。その意味では、男性の殺し屋に襲わせること、それ自体が「特殊な研修」と言えるでしょう。また、アシュトレトは1人でよいので、複数残れば、相互に淘汰することになります。

    ラスト、幸子(さちこ)と幸子(ゆきこ)は、アルバイトではなく個人的に殺したい人物の交換殺人を図りますが、、、、ここがミソなのでしょうね。お互いの感情の齟齬、何かによって押しとどめられる運命、彼女たちの不確定要素満載な未来。

    さて、この物語はいろいろとモヤモヤが多いのですが、それは観客側の自由な補完に任されていると思います。
    ・佐世は何のために、また誰の指示でアシュトレトを作ろうとしていたのか。
    ・碓井はなぜ高額バイトの正体を探るの?(公安?ジャーナリスト?それとも)
    ・幸子(ゆきこ)はなぜ友人のために高額のバイトとして殺人に手を染めたの・・・①
    ・ラスト近く、五味は5人残ったと言い、3人が女性だとしています。そこで、残り2人 は男性となります。1人は学生の田村なのは明白なのですが、もう1人は誰・・・②
                                     等々

    例えば、こんな風に私は考えてみました。
    ①については、幸子(ゆきこ)は友人のまゆりに強い恋愛感情を抱いていたのではないかと。このことは、彼女が身を挺して、彼女のためにお金を作る動機となりますし、彼女を執拗につきまとう(実際、まゆりと大学教授の不倫現場に踏み込み、その過度な干渉度合いから、まゆりにストーカーと呼ばれている)ことからも想像できます。元は愛人関係にあった、その大学教授に強い殺意を持つのも、裏切られたとかではなく、まゆりと関係を持ったことに対する強い嫉妬ではないでしょうか。

    ②もう1人は、もしかしたら碓井ではないでしょうか。
     彼は、そのバイトに従事するうちに、その内情を知りたくなったので、後輩の吉岡を バイトに巻き込んだり、佐世を拉致したりした。舞台中、佐世は碓井と面識がないよ うでしたが、そもそも名前を覚えない佐世ですし、碓井は吉岡に偽の履歴書を出すこ とを示唆していますから、自らは偽の履歴書を出したことで、しばらくは雲隠れに成 功していたとも考えられます。

     その他にも、いろいろと想像を膨らませてくれる、それを許してくれる豊穣な舞台で した。 

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    2018/08/02 11:34

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  • いくつも腑に落ちました。ありがとうございます。

    2018/08/02 14:12

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