鬼神綾話 公演情報 芸術集団れんこんきすた「鬼神綾話」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     「かつて女神だった私へ」(追記7.16:06:40)

    ネタバレBOX

     2人芝居の年と銘打って為された公演の再演である。ネパール各地に現在もクマリは存在するが、今作で描かれるのは首都カトマンズの生き神“クマリ”だ。周知のとおりネパールは、世界で唯一国教をヒンドゥーと定めているが、クマリは仏教徒から選ばれる。イスラエル建国以前のエルサレムのように、各宗教、各宗派の融和がこのような形で実践されているということなのかも知れない。
     今作で描かれるのは3歳でカトマンズのクマリに就任しその後9年クマリとして生きた少女の物語である。初演時と異なるのは椅子の背に金で塗られた装飾のものが用いられている点、クマリの化粧、肌の色がより現地の人に近くなっている点、後ろ壁に様々な形、色の布が貼り付けられ、恰も国政の動きや、人の心の移り変わりを表してでもいるかのようである点などである。衣装も少し手を加えた。
     脚本・演出レベルでは、初演よりストーリーテリングにし理解しやすくした点が挙げられる。この点で秀逸だったのが、クマリになる最終試験の最後に幼女が歌を歌うシーンである、初演では現地語の歌詞を1番のラスト迄歌い切ったのだが、今回は、3歳の幼女が両親から離され、クマリとして生きる覚悟と懼れ身悶えるような切なさに歌声は小さくなって途切れることで、見事に幼女の抱えた世界の重さと深さ、それに耐えようとする健気な不安を表象している。奥村千里さんの演出も演技した小松崎めぐみさんの歌唱も素晴らしい。
     ところで自分の知識も少し増したから、この辺りがゾミアの一地域に当たるかも知れないという発想も湧いた。このように考えると、ネパール各地にクマリが存在し、その就任後の扱いが大いに異なることの歴史的、地理的、文化史的、民俗学的等々の説明にはなるかも知れない。調べてみると人々の生活の中には、未だ呪術(黒魔術も白魔術も)が信じられているということも聴く。実際呪術師が居るとのことだ。このような文化的土壌の上にこの話が成り立っているとすると、クマリとネパール政府の調査官との論戦でクマリの用いる論理に普遍的であると同時にどこか超越的、神的要素が在るように感じるのは、不思議なことではないのではないか? 
    深い思想を表現しなければならない作品なので、役者の息がぴったり合わないと難しい作品だ。その点で、2本に出演する中川朝子さんの負担は大変なものだったろうが、再々演の時には、今回のように2作交互でやるならば、2作品とも、役者同士の息がキッチリ会うまで練習を重ねるか、1本ずつ上演することが望ましく思われる。

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    2018/07/16 04:54

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  • お名前をフルネームで入れました。
               ハンダラ

    2018/07/16 12:26

     シャワーを浴びて少しスッキリした所で追記しておきました。
                          ハンダラ 拝

    2018/07/16 06:39

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