青色文庫 ー其四、恋文小夜曲ー 公演情報 青☆組「青色文庫 ー其四、恋文小夜曲ー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    古民家「ゆうど」での至福のひと時。とても素晴らしい朗読劇で大いに堪能した。たまたま観劇した日、この古民家の主が紛れ込み場内がざわつくこともご愛嬌か…。

    (上演時間1時間30分)A『恋文小夜曲』

    ネタバレBOX

    基本は朗読劇であるが、動きや音楽(歌)があることで「総合的な感覚」…聴覚・視覚という基本に加え、味覚(ゆうどの井戸水を使用した麦茶の振る舞い)、臭覚(庭の木々の匂い)そして身近での朗読という息遣いが感じられる触覚という五感をフルに刺激される好公演であった。
    それでも台詞は,朗読表現の唯一の直接的な手段であり,筋や役の性格を含めて,劇的な内容がそれを通じて行われる。その意味で、この朗読劇の水準は格段に高い。

    この朗読劇は、劇公演と違ってセットの作り込みは少なく、逆にこの古民家ゆうどの持ち味である和風家屋の特長を生かした雰囲気の中で語られる。第1部は大正時代に綴った恋文と女性を称えた手紙の二本立て。第2部は、吉田小夏女史の戯曲から、恋に纏わる台詞達をセレクションした抜粋劇。「詩情溢れるダイアローグとモノローグで紡ぐ、恋物語の短編集として再構成」という謳い文句通りの印象深い内容だ。

    客席エリアの左手にある廊下が役者の出はけ通路、こちらからはガラス戸を通して和風の小庭が見える。客席の対面となるステージ、その上手客席寄りに別室への隙き間があり活用する。正面に床の間、いつくかの段組み棚があり小物が置かれている。そして硝子椀の中の灯りが仄かに照らす。

    朗読。第1部1篇は文豪の文(ふみ)の朗読、島村抱月が松井須磨子へ宛てた手紙は、言い訳というか泣き言のような滑稽さ。第2編は女性同士の文の往還、抒情性の中に感情が潤ってくるような繊細さ。第2部は吉田女史自身の戯曲からの抜粋。劇中場面の再現という発想はユニークだが、その場面の選択(尺も含め)が難しい。劇は全編を通じて観客の感情を揺さぶっており、たとえ山場と言われる感動シーンであっても、前後関係を省略した朗読劇が聴衆の感情を刺激するだろうか、という危惧があった。結果的にそれは杞憂であった。ここでは公演-劇中の感情を同じように”刺激”するのではなく、朗読によって情景場面を”詩劇”し抒情的な味わいを出していた。

    アナグロの代名詞のような「手紙(恋文)」をあえて現代に披露する。現代では同じ文字・言葉をメールという手段で瞬時に相手に送る。手軽さや料金においては手紙より勝ると思う。手紙とメールは同じコミュニケーション手段であるが、手紙は書き手の心を伝える温かさと肉筆による味わいがある。もっとも朗読劇ではその肉筆による温もりは感じ取れない。しかし、手紙を投函して相手からの返事を待つ、その一連の時間が愛おしい様な気持が伝わる好公演であった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/07/14 09:58

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