満足度★★★★★
鑑賞日2018/07/12 (木) 19:30
座席最前列
他の投稿者さんの諸々のご意見に、それぞれ賛同。
パンフレットを読むと、中村匡克さんは初演時に、かなり忸怩たる思いをしたようで、今回の再演にそのリベンジを誓ったように思えます。
その意思が最も反映しているのが、舞台装置ではないかな。
とにかく、場面が変わる替わる。
タクシー内、スーパーのスタッフルーム、留置場、警察の面会室、主人公阿久津の部屋、レンタルビデオ店、殺される夫の営む理髪店、最後には、スーパーのレジから、上の丸井の前。その間ところどころで、法廷であろう被告 阿久津と証人たちの証言が、独白調で挟まれる。手間をかけた舞台装置を駆使しながら、一方で多少の周辺の雑多さを無視した場面設定。過去と現在をないまぜした(それでもわかりやすい)、舞台進行は見事の一言。
初演の新宿眼科画廊では、全体のスペースや十分な舞台裏がないことから、今回のような舞台装置はしようがなかった。そして、この舞台装置なくしては、この物語をここまで描き切れなかったはずだ。
タイトルを「慕情の部屋」のままにせず、敢えて「2018」を付けたことに、過去への悔恨を拭い去り、今作を描き切ろうという作者の強い意志を感じた。