Mの肖像 公演情報 劇団ヤリイカの会「Mの肖像」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    高校時代の友人とのルームシェア、日常の淡々とした暮らしに隠された鬱憤晴らし…不穏が積み重なり変な緊張感が生まれるサスペンスもしくは心理劇といった公演であった。
    旗揚げ公演、作・演出の島ハンス女史の心情を濃密なプライベート空間で描く女2人の三人芝居である。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    セットはルームシェアする2部屋と共同スペースであるダイニングという構図である。上手側がプロのバンドマンを目指し上京したムツ(島ハンスサン)の部屋。引越してきたばかりでダンボール箱が積み重なっている。一方下手側は、先に住み銀行に勤務しているミズキ(阿部沙也加サン)で、テーブルその上にパソコンが置かれている。

    梗概…2人は高校時代の友人でルームシェアを始める。入居1日目にして知らされる、衝撃の事実。ミズキはムツの前にエムという女性と同居していたが、エムは1ヶ月前突然いなくなった。実は自殺したと言う。その部屋にムツを住まわせ、ムツは気味悪がらず居続けるところにも驚かされる。さらにムツは、天井裏でエムの日記を発見し彼女とミズキの過去を知る……。

    ミズキは、どちらかと言えば堅い職業に就いており休日出勤も厭わない真面目な女性。一方、ムツや亡くなったエムは芸術家肌でエムは美術系大学院に通っていた。分り難い人間性のようなものを、善し悪しは別にして職業的な外的要素で判別させる。その間にある溝のようなもの、それを自分との価値観、考え方などの相違として表現する。ミズキは何となくムツやエムを見下しており、その2人がネット上で話題になることに耐えられない。嫌悪・嫉妬・不快など自分を制御できない、自分自身を見失った感情に捉われる。同一空間に居るが、ネットという別手段で友を裏切るような行為の怖ろしさ。

    劇中に出てくるエムの自画像は、チラシの袋を被ったようなものであるが、さらに多くの目が描かれている。他人を意識、気にするような示唆など、小物の利用は巧い。またムツの部屋のダンボール箱が段々整理されるあたりは、上手く時間経過を表している。
    一方、現在のムツと回想もしくは日記の中のエムが島ハンスさんの1人2役であるが、その人物の違いを暗転・明転によって状況の区別をさせる。その頻度が多いことから物語に集中し難い。物語は面白いと思えるが、その面白さを引き出す工夫、演出が不足しているようで勿体なかった。
    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2018/07/08 11:30

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大