ピース 公演情報 SPIRAL MOON「ピース」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    21日間の疑似家族を演じことで目覚める”実の家族への思い”というヒューマンドラマ。この芝居の面白さは設定、そしてその場所・状況をきめ細かい演技で具現化させているところ。また舞台美術はシンプルであるが、観客に配慮しつつ観せる工夫をしているのが良(酔)い。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    セットは船上…光景は板状のものを吊下げ、微妙に揺らすことで船の動きを表す。中央にテーブルとBOX椅子がいくつか置かれているシンプルな造作である。船上という様子は、役者の動きにも”揺れている”という演技に現れている。上演後、秋葉舞滝子女史から揺らす動作は、やり過ぎると観客が船酔いを起こすため(手加減)調整が難しかったと聞いた。

    政府の国家プロジェクトとして、船上で21日間疑似家族を演じて、その結果データを分析したいというもの。一度乗船すると途中で役割放棄できない、そして成功報酬が魅力的という設定である。始めのうちは見知らぬ同士ということもあり、ある程度距離を置いた接し方であったが、時間の経過とともに打ち解けてくる様子が微笑ましい。さて、集められたメンバーはお笑いタレント、トラック運転手、スナックのママ、主婦、美術の高校教師、引籠り大学生といった関連付けが想像できない人達である。冒頭、厚生労働者と総務省の官僚から本プロジェクトの趣旨なりの説明があったが、あまり理解出来なかった。この疑似家族に与えられた命題が鮮明でなかったことから、表層的には面白可笑しく観たが、物語の”芯”を捉えたか心許ない。

    物語の柱を別にすれば、登場人物の背景は丁寧に描かれ、それぞれの関係性を幾つかのシーンで繋ぎ人間味を出すところは巧い。先に記した舞台美術のシンプルさは、それだけ役者の演技力がないと情景描写が伝わらない。その点、船上を意識させず、疑似家族という与えられた役割(柄)の人間性の深堀りと関わりを通じて、分かり合える心の温かさを感じることができた。緩々とヒューマンドラマ的に流れるところであるが、そこに唯一、船上を意識させる遭難?シーンを持ち込む。21日間という期間と同時に限定された場所であることを再認識させ、改めて物語に集中させる演出は上手い。

    冒頭は21日間の疑似家族体験が終わり下船するシーン。ラストはこの冒頭シーンへ回帰するが、それまでの軽妙でコミカルなタッチから劇画調へというイメージを持った。別れを惜しむ、その哀感とこれからの人生への活路が見い出したような余韻が素晴らしい。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/06/14 18:35

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