満足度★★★★★
淡路島の小さな工場で、鬱屈した日常を送る人々。「ここを出たい、変わりたい」と願う一人の女子事務員が起こした行動から、それぞれが人生に抱く夢や挫折が浮かび上がってきます。
冒頭からほぼ無対象で反復される、工場の始業から終業、スナックでのアフターファイブまでの流れは、繰り返される日常、その抑圧を、とてもわかりやすく、時に楽しく伝えてくれました。とりわけ、高圧的な先輩と、彼に付き従うかのように見えて実際は見下してさえいる後輩工員との微妙な関係は、彼らの暮らしに貼りついてしまった諦念、淀みを感じさせ、このドラマを駆動させるための前提(環境)の役割をも果たして、見事でした。
ここに出てくる人々は、特に凝った、気の利いた発言をするわけではありません。ですが、その一見平凡なやりとりの中にも、彼らの欲望(本心)は確かにのぞいているように見えました。終盤、先輩後輩がついに対峙する場面の演出は、ちょっと歌(「さよならCOLOR」)に頼った感もありましたが、若者の暴走系青春ストーリーと見せかけて、実は、先輩も含めた妙齢の男女の迷いや悲哀をも汲み取っていく物語の奥の深さには、心打たれるものがありました。