はこぶね 公演情報 劇団おおたけ産業「はこぶね」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    何気ない集まりが、段々と新興宗教色を帯びてくる。ある出来事によって人々の生身の人間臭さが浮き彫りになってくるブラックユーモア。
    (上演時間1時間25分)【Bチーム】

    ネタバレBOX

    素舞台、ときどき腰高の棚のような所に座るなど単調にならないような工夫が観られる。場内は明るい淡色で、現実感・生活感がなく浮遊感に包まれている。シーンに応じて衣装を変えるなど、室内に変化がないだけに観せる工夫は好かった。

    物語はヨガまたは精神修養の教室のような集会に連れて来られた女子大生・鳩山(石井智子サン)が戸惑いながら、言われたポーズをするところから始まる。この冒頭シーン、数人に囲まれ強要ではないと言われるが暗に断れない雰囲気にさせるところは、新興宗教の勧誘を連想させ面白い。その光景を後押しするように、タイトル「はこぶね」に絡め旧約聖書の「ノアの箱舟」が朗読される。雰囲気は宗教色を帯びているが、実際は友達感覚の緩い集まりである。たまたまリーダー的な男・庵野タロウ(藤原拓弥サン)が人の前世が分かるという特別な存在として描かれる。グループ内の女・烏丸(西出結サン)がタロウを教祖のように別次元へ押し上げようと「メシア」「ガーディアン」などと言う独特な呼び方を始める。一方「グル」など別の呼び方をする者も現れ、チグハグな会話が緩い笑いを誘う。

    鳩山は自分が見る夢とタロウがいう自分の前世がリンクしているようで、気になっている。タロウと2人で外出・散策しながら聞きだす姿がデート・恋愛に発展しているように誤解される。鳩山の友達感情と烏丸がタロウに抱く特別な存在の感情、鳩・烏の白黒感情が衝突したときに、不可解な感情が沸き起こり「悪魔」呼ばわりになる。普通に存在するようなグループが何かの拍子にカルト集団に変容する。それは判断、決断しない人々が回りの環境、状況、または風潮、雰囲気といった抽象的な事柄で流されてしまう危うさ、怖さを面白く観せている。

    内容的には面白いが、籠められた”思い”のようなものがフワッとしてインパクトが弱く感じられたのが勿体無かった。好みとしてはもっとエッジが利いたほうが良かった。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/05/30 17:09

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