Silent Majority 公演情報 劇団龍門「Silent Majority」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    人生の”羅針盤”はどこを向いているのか。目標、夢に向かっていく経路は人様々、その道筋をたどる羅針盤は自分自身の選択と決断に委ねられている。自分の人生だから当たり前かもしれないが、時に悩み苦しむことがある。それをいくつかのシチュエーションで描き、全体を優しく包んだような公演。
    (上演時間1時間50分)

    ネタバレBOX

    本公演は「羅針盤」(2015年)の再演。セットも同じような作りで、後景に鉄道の陸橋、客席寄は事務所(探偵事務所または取立屋)内で事務机・椅子が置かれている。上手側が事務所出入り口、下手側はゲイバーの休憩室といった設定である。

    探偵事務所にはインコ探し、アイドル(または女優)の悩み相談など千差万別な依頼事が舞い込む。さらにゲイバーの4人の生き難い世の中や心の葛藤、数千万円をかけて整形手術したゲイバーママの割り切った人生訓、ハリウッド俳優を目指す若者の不安定な精神状態、取立屋の更生姿などが、オムニバスのように描かれているようだ。表層的には先に記したシーンを交錯させて1つの物語として構成している。観せ方はある程度悩み事などの小話が完結し、次の話に繋がる展開である。テンポよく感じるのは映画のカット割のようにシーンごとのメリハリが利いているからだろう。

    人生の究極…「生」と「死」の狭間にあるのが悩み苦しみ等であり、何かを選択することだろう。そのキッカケの手助けになっているのが探偵事務所(イメージは悩み相談なども行う何でも屋)での独白・激白。後景(陸橋上=自殺)が「死」、前景(事務所内=快活)が「生」といった描き方で、それら全体に見える全景が人生の選択といった構成で巧い。

    底流にある筋は、元刑事が悪徳刑事の後輩を裏切り刑事事件にして服役させたこと。そのため刑事を辞め探偵事務所を開設、そして出所した元刑事の復讐が…。彼ら自身もそれぞれの立場で生き方を選択している。この元刑事同士の演技が緩い笑いとビターな味わいと深みが感じられ良かった。他の役者も登場人物をデフォルメして演じているが、その心内は十分伝わる熱演であった。
    卑小なことかもしれないが、「人生はやり直せる」「人生から逃げない」などの台詞は、あえて言わなくても劇中に溶け込んでおり、十分伝わるのではないか。劇として骨太感を観せるためかもしれないが、逆に教訓臭のようなものが出てきてしまうのが残念であった。

    ラスト、陸橋の上から主宰の村手龍太氏が、この物語には主人公がいないと言う。劇中の人物一人ひとりの選択を描くと同時に、観客に向かって貴方の人生、どう生きるかの選択は貴方自身で という投げ掛けが…。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/05/28 17:41

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