満足度★★★★
新しいシラノである。もともと、これは仁義の話で、極端な鈴木忠志の手にかかると日本の葉隠と重ね合わせたりするシリアスドラマである。ところが今回のマキノ台本、鈴木裕美演出のシラノはやたらに明るく元気がいい。役者も、吉田剛太郎に黒木瞳。それに新人(見た回は白洲迅・大声になるとマイク使いがうまくなくて台詞が通らない)の士官役。この三人に軸を置いて、愛情の行き違いを、テンポよくショーの感覚で見せていく。冒頭の百人斬りを始め、有名な影の声で口説くシーンなど、それだけを面白く見せることに集中している。そのためか、六角精治の役など、物語はつながりにくくなっている感じだ。だが、原作のシーンは殆ど踏襲しているので、長い。3時間15分。これは名場面集のようにピックアップしてやっても面白かったのではないか。もてあましているシーンもなくはない。とにかく、主演者二人の湿っぽくならない芝居で劇場は大いに沸く。ピアノとドラムスのだけの音楽ながら音楽劇風な作りのシーンもあり、こういうシラノもあるかと、新鮮で楽しめた。