Melody 公演情報 TEAM 6g「Melody」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「2017年グリーンフェスタ賞」「BOXinBOX THEATER賞」のW受賞作の再演。TEAM6gにとっては初めての再演だという。初演時にも観ているが、笑い泣ける素晴らしいヒューマンドラマで観応え十分な秀作。鳥取県の田舎町で暮らす人々、平凡な生活を坦々と紡いでいるが、そこに厳しい現実をつき付ける。それを”家族の愛”という力強い普遍性で乗り越えようとする姿。生きようとする”人間ドラマ”は繊細であり骨太でもある。

    2017年の時とほぼ同じキャストであったが、一部新キャストに替わり新たな味わいが感じられた。また舞台技術の照明・音響効果によって心情豊かな表現が増し、より一層印象深い公演になっていた。
    (上演時間2時間10分) 2018.5.21追記

    ネタバレBOX

    舞台は1999年…世紀末。鳥取の田舎町にある民宿「さざ波」。セットは正面にメインになる居間と縁側。上手側に玄関、下手側は厨房になっており、観え難い内側にも細かい施しがされている。縁側近くに咲いている植木花は季節に応じて変化させる。物語を一層分かり易くするようなセットがしっかり組まれている。また伏線という意味では、壁に劇中でも踊る「しゃんしゃん祭」のポスターが貼られている。物語の内容はもちろん演出面において、視覚に直接伝わるような観せ方は多くの人に親しんでもらえると思う。

    母親を幼い時に亡くした主人公:池脇明音(阿南敦子サン)が、母親代わり民宿の切り盛りをしている。そこに訳ありな男・瀬戸草太(平田貴之サン)が客として来る。草太は自分のせいで親友を殺してしまったという後悔の念に囚われ、生き方を見失っている。また書けなくなった人気小説家や作家を支える編集者など、それぞれに悩みを抱えた客と「さざ波」の人々の交流を描いた物語。騒がしい人々が醸し出す優しさ励まし、何気ない日々の暮らしが…。市井の暮らし、人の喜怒哀楽がしっかり注ぎ込まれたヒューマンドラマ。

    身近に起こり得る現実は、全編を通じ方言で喋り細やかなディテールが温かさ、切ない気持として伝わる。素朴な人間像は等身大の人物描写のように寄り添ってくる。その心情表現は、描く対象人物を円形照明で照り抜き、周りの暗との対比で孤独、哀切、寂寥といった心中が浮き上がってくる巧みな演出。
    植木花同様、衣装も季節に応じて変わる。例えば冬物でも室内に居た人と外から来た人で厚着の仕方が違うなど細かい配慮が見事。そして音楽は洋楽、和楽(祭囃子も含む)そして劇中歌の使い分けも心憎い。暗転時にはそれらの音楽を流し舞台から気を逸らせない工夫も上手い。

    テーマは「家族の愛」であろうか。消えそうな記憶に人生の無常を感じさせるが、一方、草太の”記憶が消えたらまた作れば良い”という言葉には希望がしみじみと胸に迫る。衒いがなく動静がしっかり利いた俳優陣の演技が公演の心情を伝えた素晴らしい公演であった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/05/20 10:24

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