火遊び公演「焔の命--女優の卵がテロリストになった理由」 公演情報 オフィス上の空「火遊び公演「焔の命--女優の卵がテロリストになった理由」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     東京オリンピック開催の2020年が舞台である。(追記2018.5.13 03:47)

    ネタバレBOX

    演劇の本質を追及し続けてきた劇団・焔の命は、オリンピック関連施設、建造物などに爆弾を仕掛け爆発させた。ニュース速報は、死者数十名、負傷者百数十名と告げた。
     今作は、この事件の2年後ドキュメンタリー作家が、加害者の一人真理子の実家への取材、関わりのあった人々への取材を通して、事件直後唯事件を囃し立てることでセンセーショナル化し、加害者家族を追い詰めた世間への異議申し立てとして、ファクトを追い求め、集めたファクトを積み重ねて、何故極めて当たり前の劇団員であったメンバーが事件を起こすに至ったのか? を検証してゆく。
     自分は、1人の友人と1つの事件を思い出し乍ら拝見していた。1人の友人とは、大宅賞受賞後、講談社ノンフィクション賞も別作品で受賞しドキュメンタリー作家としては王道を歩んでいた友人の取材方法であり、もう一つ、事件とは、あさま山荘事件である。
     友人は、センセーショナルな扱い方を嫌い、丹念にファクトを追い、綿密な取材を積み重ねることによって、優れたドキュメンタリーを多く残した。今作に描かれたドキュメンタリー作家も同じ方法を用いている。何故か? 状況次第でどんな人も、ここに描かれたような行動を起こしかねないし、それは人間というものの持つ本質的属性であるからだ。良いことも悪いことも、ヒトは起こし得る。
     あさま山荘事件についても、最初期、マスコミは若干好意的であった。山荘所有者らが「人質」として取られた時も、立て籠もったメンバーは、人質の不快にならないようかなり配慮してくれたとの報道もあったが、それらの報道はセンセーショナルな情報洪水の中に埋没させられていった。立て籠もりメンバーを凶悪犯とイメージさせるような方向に変わったのである。この経緯で国民殆どが熱狂的に山荘立て籠もりメンバーを冷酷無比と断罪する方向に走った。自分達が冷酷無比に彼らを断罪していることは棚上げしつつ。
     社会の様々な矛盾や、政治の瞞着、司法(殊に最高裁判断)の三権分立否定等々、国民がキチンと筋道立てて社会を変えようとしても合法的手段では埒が明かないこの植民地為政者たちの施政等々の問題は、このセンセーショナリズムによって何時もの通り一掃され、祭りが挙行されるのは、この「国」の習わしである。
     これらのことが、合算されて諦め切った「国民」と共に為政者がいくら嘘を重ね、隠蔽を繰り返し、無責任に無責任を重ねて、総ての責任を負うことなく為政者として在り続けても、総てスルーすることで鵺のような社会を作り上げていることによって、抗議が届かない社会が完成してしまうのである。こう言うといつも茶々を入れてくるダニが、またパラノイアそのままの下らないアヤをつけてくるのだろうが、この下司共の主張する社会とは、誰も責任を負わないから、何でもアリ。正義を気取ってその実、何も自分の頭では考えることのできない杓子定規が大手を振って歩き出す。結果、法などで、表面だけは収まっているように見えても、一旦ことあれば、内実のカオスは直ぐに頭を擡げてくる。その結果が、事件を起こした人物の家族苛めである。欧州諸国でも、非難が全く起らないということは無かろう。だが、加害者家族の側に立ち、彼らを擁護する人々が声を上げるであろうこともまた確かである。ラストシーンで、日本の家族が置かれる状況を本質的なレベルで描いている点は、強烈なアイロニーである。

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    2018/05/10 16:52

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  •  学生運動最後の世代である自分には、非常に近しい感じの作品でした。まだまだ、語っていないこともありますが、コリッチでは、この辺りまで。
                         ハンダラ 拝

    2018/05/13 03:49

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