イギリスの演劇 公演情報 朗読・演技 ワークショップ「イギリスの演劇」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     一幕三場。途中2度、5分の休憩を挟んで約3時間の公演。
    (追記2018.5.4)

    ネタバレBOX

    舞台は、犯人たちの住居の一室。中央に函。下手には荷物などの置ける台。下手奥にソファなど。スタンド式の帽子掛け、上手奥は部屋への入り口が斜めに設えられ入り口左手には電話などが置かれている。上手壁際には本棚や、お茶や飲み物の置かれたテーブルがある。
     真っ暗な中で舞台は始まる。Aは、危険を冒す為に殺人を犯した。完全犯罪を為したつもりだ。その為、遺体はこの部屋でこれから行われるパーティーの料理を載せるテーブルとして用いられる棺桶の中にしまわれている。このパーティーの客は、被害者の父B、大学の同級生の男C及び女D、インテリの代表と目される詩人E。他の登場人物は、召使Fと共犯者Gである。招かれている客のセンスから分かるようにAは自信家で虚栄心が強い。ガイシャは、スポーツで華々しい成績を残し、映画や音楽などの好きな誰からも好かれる爽やかな20歳の好青年。Bはサーの称号を持つ紳士で書籍収集家としても知られる。Aは最近亡くなった親族から貴重書などの蔵書を譲り受け、今日は、その蔵書をBに見せる約束もしていた。
     Gは、Aほど居直ってもいなければ自信家でも無い。従ってAが犯した殺人の共犯者としての自分の犯罪行為に怯えてナーバスになっている。謂わば小市民である。
     パーティーは21時からだが、20時45分に服装はどうするのか? について尋ねる為にEが電話を入れた時、ナーバスになっていたGは、うろたえた状態を悟られてしまった。而も、彼らが、殺したBの息子が、その日行っていたコンサート会場の入場券は、Eの入手する所となっており、Eは彼らの犯罪を告発するばかりになっていたのである。Eはパーティーの最中、折に触れて証拠固めをしてゆく。その間、参加者の会話や態度を通してイギリスの差別社会の実体、陽の沈まぬ国と言われてきた歴史の裏にある狡猾極まる外交と主として海軍力を用いて力によって支配を貫徹し、被支配地の少数派を支援することで被支配地を分断統治する冷徹さ、及び差別意識による道徳観麻痺などの策術など、英国式気取りの背景が浮かび上がる。この辺りの脚本の良さ、この雰囲気を浮かび上がらせる演出、演技の良さは見事である。(国外の作品を日本で上演する際、良く体験するワザトラシサや浮いた感じが無い。代わりにイギリスの上に挙げたような社会の在り様が滲み出てくるのである。)
     Eは、アイロニーを込めて己が足を引きずることになった原因として殺人を挙げる。その殺人は戦争に於いて犯した殺人であるが、彼にとってそれが殺人であることに変わりはないからである。この公平性にこそ、Eの真骨頂がある。彼は真正の芸術家として、偏見に囚われず真正な判断を下すことができた。その証拠に彼自身、己を許していない。そしてそれ故にこそ、最後の確証を掴むために、遺体を運び出そうとするパーティーの部屋に舞い戻ってきたのであった。この最後のパートでも息詰まる展開を極めて緊迫感のある演技で支えている。
     最期には喧嘩の強いAを、冴えた論理と冷静沈着で謙虚な態度のEが打ち負かして幕。

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    2018/05/03 23:53

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  • 皆さま
    追記しておきました。
    ご笑覧ください。
    尚、登場人物は敢えて
    アルファベットにして
    おきました。
           ハンダラ 拝

    2018/05/04 14:46

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