731 公演情報 パラドックス定数「731」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    狂ってる。




    ヒトはどのような状況で、どのようになるのか、これはひとつのフィクションでもあり、ノンフィクションでもあるのかもと。
    そして、多分、このような感情を観劇中に持つことはあまり、自分は無かったのだが
    辰沢役(小野ゆたかさん)が自分が帝銀事件をやったと語る場面で、「お前がやったのかよ」と睨んでしまった。
    罪に対しての態度というか(劇中そこがどの役柄もポイントだと思うが)それを観た瞬間、苦しんで死んだ8歳の子どもが私の脳裏に浮かんだ。


    「お前が殺したんだ」と何故だが、分からないが物凄く憎しみの感情がうまれてしまった。
    きっと、余りにも、「死」に対しての彼らの感じ方が怖すぎたのかもしれない。


    だから、「狂ってる」と感じた。


    「戦争だから」
    「命令だから」
    「医学の進歩の為だから」

    戦後生まれた自分にとって
    戦争中の心理はあくまでも「想像」でしかない。
    何故、人が人でなくなってしまうのだろうか。


    「殺される」状況になったら「殺さなければ、自分が死ぬ」と
    思う。
    ただ、自分はそのような状況になった事が無い。
    ただ、「戦争」はそれが日常であったのだから「しょうがない」という理由になるのだろうか。


    731部隊は、戦時下において一種、異なった狂気ではなかったのか。
    研究者たちは、あの状況を「天国」と思っていたのか。
    あの状況を「おかしい」とは思わなかったのだろうか。


    思ってはいなかったのだろう。
    何の制約も受けず、「普通」であれば倫理が邪魔するであろう「実験」、いえ、「殺人」を思う存分出来たのだから。


    その「殺人」を行って、得た多くのデータは彼らにとっては、煌めくものだったのだろう。
    「もっと、もっと、データを・・・」


    戦争が終わり、日本へ戻ってきた彼らは
    「死」を恐れた。
    自分達の身の安全を、仲間を見張りながら絶えず、見えない恐怖に
    怯えている事を隠しながら、生きようとしていた。


    これは、物語だろうか。
    人間はこうも、醜いのだろうか。
    これが、物語だ。
    人間は、こうも、醜い気持ちを持っている生き物だ。


    葛藤もある。
    しかし、彼らはけして、あの実験を後悔してないのだろう。
    何かのせいにして、
    けして、「自分」が悪い訳ではないと思ってる。


    大なり、小なり、私もきっと、同じような考え方をすると思う。
    あの焼け野原で残った建物の一室で
    今もきっと、同じように
    会話をしてる影が見えるかもしれない。
    そう、感じた公演だった。

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    2018/05/03 15:40

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