渇生 公演情報 HIGHcolors「渇生」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    重いテーマを2家族の視点を交差させて描く骨太作品。
    涙も叫びも嗄れたが、それでも生きている、生きようとしている、そんなことを思わせるタイトル「渇生」。観応え十分の公演であった。
    (上演時間1時間55分)

    ネタバレBOX

    セットは、上手側と下手側にそれぞれ柊家と岸川家のダイニング(基本はテーブルと椅子、岸川家には冷蔵庫等)、中央上手側に少し高くしたアパート・阿久津栄吉(新納敏正サン)の部屋。

    物語は交通事故の被害者・加害者家族の苦悩・憎悪を軸に据えているが、もっと広い犯罪絡みの被害者・加害者の関係として捉えて観ることも出来る。さらに家族の有り様についても問題を投げ掛けている。
    物語は24年前に子供の出産時に交通事故を起こし、幼子を轢き殺してしまった男・阿久津とその家族(離婚し岸川姓)。その苦悩と悔悟に苦しむ日々。一方、被害者(柊家、特に母親)はもって行き場のない悔しさ、刹那さの日々。加害者家族に対する恨み、復讐という憎悪を生きる糧にしている。事故時妊娠していた子・鈴木奏多は無事に産まれたが、24年後、今度は自分の夫が交通事故で亡くなるという皮肉。
    被害者の母・柊麻衣子の「もう帰ってください!もう二度と来ないでください」という台詞は、諦めと踏ん切りをつける自分自身への決着の言葉。一方、加害者(栄吉と岸川澄子)は謝罪が受け入れられたという安堵と救いの思い。

    2家族の視点以外に、栄吉が住んでいるアパートにいる若い女性・旭陽葵を登場させているが、重くなるテーマのクッション的な存在であろうか。実は交通事故を主軸にしているが、そこには「家族とは」という視点も潜ませている。岸川家の長女は養子のようであり、柊家では息子が事故死した後、特別養子縁組をし血の繋がりがない息子がいる。しかし血の繋がりがない子に向かって”家族”という言葉を繰り返し言う。一方、旭は実親から自分の利用価値(バレーボール選手としての名声等)が無くなったことで両親が不和・離婚したという。家族とは 血の繋がりとはを考えさせる。

    死んだ人を忘れることによって前進できるのか、死んだ人と共に生きる方法は_分からないもどかしさが痛いほど伝わる。心情描写は、演技の確かさ、舞台技術-照明の諧調、音楽「夕焼け小焼け」が物悲しく響く様で感じさせる。公演全体は重苦しい雰囲気であるが、ラストシーンはホッとさせる、そんな余韻が…。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/04/28 10:35

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