満足度★★★★★
確かに、騙されました!!!
観劇させて頂きました。この作品は、農村における村社会に生きる人たちの人間模様を描いた作品でした。この作品の開演前から流れる音楽、そして開演からの音楽とその音楽の組み合わせ方が、懐かしくも昔の自分が良く聴いていた音楽を思い出させ、プログレではないけれどもなぜだか妙に元オタクの血が騒いだのですが、やはり今でも自分のオタクの直感は変わっていませんでした!この作品の開演からの役者さんたちの台詞の一つ一つを取り出したならば重いものを感じるはずなのに、舞台上の役者さんたちから発せられる台詞からだと、むしろ飄々として軽薄にすら聞えてくる、役者さんたちの力量を十分把握し逆算したとしか思えない台詞構成が自分の「笑いのツボ」にピッタリと合い、よく笑わせていただきました!ですが、元々は重いものを感じてもおかしくない台詞ですから、人によってはシュール、あるいはブラックユーモアぐらいに口元を少し緩めるぐらいの笑いになってしまう方もいらっしゃるでしょうし、それ以前に拒否反応を示す方もいらっしゃるかもしれません。それは、観る方各自の好みなのでしょう。自分の場合はこのように役者さんの演技力の力量から逆算して、重い言葉でも舞台上の役者さんたちが一度口にするだけで、飄々として軽薄なものすら感じさせられる「逆算された台詞」の組み立て方が妙に気に入って肌に合い、面白いものを感じてしまいました!そして、開演前から流れる音楽も肌に合っており、その音楽のリズムが肌に残っていたのか、本作品の物語展開もまた自分には非常に肌に合うリズムの刻み方のように感じられて、物語の展開の仕方もまた妙に気に入って肌に合ってしまいました!ですが、本作品を農村における人間模様を深刻になることなく飄々と軽薄にすら思えるように描いた作品かと思いましたが、違いました。自分とは全く関係のない、これからもまず関係のないことだろうと思われた農村における人間関係だと思って、気軽な気持ちで笑っておりましたが、本作品の光景は日本の社会の縮図にしか観えなくなってしまいました。よく考えてみれば、日本の社会そのものが村社会。「組織」や「宮仕」という言葉を良く知り、仕事帰りには会社の仕事や上司の愚痴を散々言いながら酒を飲み、「そんなに嫌ならば辞めてしまえば」と言われても辞めることなく、仮に辞めたとしてもまたどこかの人間関係で例えどんな嫌な相手であっても、頭をペコペコと下げることもあれば、どこかのほんの小さな組織、地域に加わらないことには、少なくとも日本では生きていけないように思え、そんな普段の傍から観たら指をさして笑われているかもしれない自分の姿が、舞台上の役者さんたちの演技する姿から観え出してしまい、もはや役者さんたちの台詞から飄々とした軽薄さが消えた時には重い言葉が自分に「ガブリ!」と噛み付いてきてしまいました!そして、舞台上の役者さんたちの演技を通して、悲しいくらい自分で自分を物語の最初とは「全く違った質の笑い」で嘲るように口元で笑い、それを最後まで浮かべてしまいました!今日は笑うことが許される完全に傍観することが出来る客席にいましたが、明日になれば自分が悲しくなるくらい滑稽な姿を誰かに晒し、その場にいた完全に笑うことの許される誰かに笑われてしまいそうな気がします。今では「組織」「宮仕」どころか、自分だっていつでも「肩たたき」「リストラ」と言う言葉を受ける対象になるかもしれません。ですが、少なくとも日本で生きていく限り、自分にはそのような生き方しか出来そうにありませんので、自分もまだこの先の人生をあまり重く考え過ぎることなく飄々と時には軽薄に、時には自分で自分を笑って誤魔化し誤魔化し生きていくしかないかぁ~、と今から飄々とした軽薄さを身に着けようかと思ってしまいました!今回の作品の評価については、自分好みのリズム感の物語展開と、役者さんたちの力量を十二分に把握し逆算し、その上物語の最後からも逆算して、「二重の逆算」を精密に計算したとしか思えない、重い意味の台詞のはずが飄々として軽薄にしか聞えず存分に笑い、やがて軽薄さが完全に消えた時、重い意味の台詞が客席にいるはずの自分に向かって噛み付き飛びかかってくる、悲しいくらいに自分の好みがそろい、悲しくなるくらい最後には自分の完全に忘れていた自分自身の滑稽な姿を、皮肉にも笑わせていただいたことから、自分は本作品に最高評価をつけさせていただきます!確かに、騙されました!メガネどころか全ての役者さんたちに!そして、こちらの劇団の全ての方たちに!少なくとも自分は完全に騙されました!開演時に感じた今でも流れているオタクの血が自分に告げます!「この劇団は買い集めろ!」と「この劇団の次回公演以降の作品を徹底的に集めろ!」と、ここでもまたまた元オタクの血が完全に目覚めてしまいました!客席に飛んでくることすら騙されそうになるくらいに、自分は本作品「メガネに騙された」に間違いなく騙されました!