タバコの害について/たばこのがいについて 公演情報 劇団夢現舎「タバコの害について/たばこのがいについて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    自分らしい生き方、これで幸せかという問いが投げ掛けられた公演。この公演はタイトルから分かるように「タバコの害について/たばこのがいについて」という2本立てであるが、上演順序は逆になっている。「タバコの害について」(1902年-チェーホフ)「たばこのがいについて」(2018年-劇団夢現舎)であり原作へ敬意を払っているのだろうか。

    さて、「タバコの害について」は原作に近いが、「たばこのがいについて」は劇団のオリジナル短編だが、チェーホフへのオマージュが観てとれる。この公演は2編を通じて観ると、文章の倒置法のような構成で”がい”を巧みに描いていたようだ。
    (上演時間1時間30分 途中休憩10分)

    ネタバレBOX

    セット…、「たばこのがいについて」は、真ん中・客席寄りに白い船形の置き物、上手側に丸テーブルと椅子、下手側に机、その上に灰皿が置かれている。また壁には描いた換気扇。入り口・場内まで「行灯パブ・ろびっち」と書かれた行灯が置かれ、吊るされている。

    話は、食事に好き嫌いが多い男、何とか偏食なく食べてもらおうと工夫する女、その2人の不思議で愛らしい、そして時に激しい丁々発止の会話劇。男は悠然とタバコ燻らせるが…。害があるタバコを好む男、一方健康を考えた料理を出す女、その男女の思惑がいつの間か恋愛話へ変わっていく。
    「タバコの害について」は、チラシにあるような和風女性が一人描かれた屏風が広げられる。場内は暗幕で囲われ、その中で屏風の女性は紅色の着物で一種の妖艶さが漂うよう描かれている。
    話は、男の一人芝居…。
    男は妻の言いつけで「タバコの害について」講演をするために人前に立つ。彼自身はタバコを吸うので、言われたから講演をする。だから後ろ向きな発言を繰り返し話は違う方向へ。そして段々、奥さんの悪口に繋がっていき…。人生を嘆いているとも、 妻への思い(想い)とも取れるような公演に聞こえる。

    講演は、前半の”タバコの害”は”妻そのものが害”のようにも聞こえるが、後半になるとその悪口に哀愁を帯びてくるようだ。2人会話に出てくる女は黒い服を着ており喪服のように思える。一方、屏風の着物女は対照的で薄暗い空間に別女性がいるようだ。
    舟形は浴槽でありピラニアを飼っているというが、男は自分(女)の後輩と浮気をしているらしい。男は小説を書いているが売れない。先の恋愛、小説(芸術)は弱肉強食と言い、ピラニアは比喩のようだ。そんな会話を懐かしむ様子、繰り返される幾つかのシーンは本音等を垣間見せるためのようだ。

    ”害”のように思っていた女(妻)が亡くなり、煩く思っていた事が懐かしく思い出されるよう。そんな哀愁が感じられる「たばこのがいについて」(劇団夢現舎)である。その意味で、時の経過は逆転しており観せ方は妄想・回想の世界観が広がる。本公演は、チェーホフの「タバコの害について(1902)」に対し講演という形を借りた「ぼやき」「本音」等に対し、「たばこのがいについて(2018)」は「甘え」「慈しみ」で包み2編を通じた劇中劇のようで楽しめた。もちろん、その独特の世界観を出現させた役者2人の演技は素晴らしかった。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/04/22 11:12

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