ファミリィゲーム 公演情報 劇潜サブマリン「ファミリィゲーム」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「グリーンフェスタ2018」参加作品。
    復讐という”負の連鎖”を人間関係における空しさだけではなく、ラストの全てを無に帰する出口のないというか救いようがない方向へ…。
    少しネタバレするが、いくつかの場面転換は、ストーリーテラー(アクマ=悪魔)によって説明されるが、その存在がなくても無理なく展開出来ると良かった。案内人がいると安易になり易く、例えば演出の巧みさではなく説明的になり観客の想像する楽しさ面白さを奪う恐れがある。
    (上演時間1時間45分) 【Aチーム】

    ネタバレBOX

    舞台セットは、四隅に柱を立て立体空間を2つ作り出す。もちろん確執がある「タチバナ家」「ウシゴメ家」を現す。その内側の床は黒色、同色のBox椅子がいくつか無造作に置かれているのみ。空虚感が漂う美術である。室内の様子を観せること、家族の心の在り様を象徴させるということを主眼としているようだ。両家の間にある空間が道路というイメージで、それは客席も同様である。冒頭は客席後方からこの2分された道路(通路)を下りてくるところから物語は始まる。

    「タチバナ家」と「ウシゴメ家」はある地方都市の向かい同士だが、前々から確執があるようだ。その理由は判然としないが、いずれにしても溝は深い。そして、それぞれの家族にはちょっとした家庭内のトラブルもあり、家庭内の不満・鬱積が向かいの家への憂さ晴らしという形で解消させている面もある。だから関係がさらに悪化するという悪循環を繰り返している。例えば菜園の野菜を盗む、家庭菜園を荒らすという行為、一方それを防ぐ対抗手段として防犯カメラを設置し警備を強化する。
    実は両家の諍いの原因は「タチバナ家」の嫁カオリ、「ウシゴメ家」の擬嫁ポンチーナの仕業であり、それを近所の女性が実行している。そして徐々に家庭内における夫婦の力関係が逆転し、今までの家庭内の鬱積が爆発するという皮肉が…。

    家族同士の諍いをアクマが俯瞰(別次元)する、ストーリーテラー的な立場・役割で眺めている。そして交差点でのすれ違いを人生、人の感情(気持)に重ね合わせ、さらには自ら家族の諍いを助長するよう能動的に動く。
    語りたい事を盛り込み過ぎのようで、テーマが暈やけ物語の繋がりが感じられない時がある。辛うじて現実的な人物描写、視覚的な表現を試みることで克服しようとしているようだ。ラストは、東日本大震災と原発の影響でその地域に住めなくなり、街が無になるような空虚感を漂わせる。その情景は人の心の空虚さと重なり合う。

    演出…柱のみの家は、外見ばかり取り繕った家族の姿を反映しているようだ。もちろん室内を見せること、ラストの大震災での揺れを表現する必要性があったと思うが、家(族)という土台の不安定さが如実に表れている。両家の諍い、そこへ近所の女性を登場させることによって地域の閉鎖性や弱みに付け込んだ興味本位的な側面も観えてくる。家族(小単位集団)から街(大単位集団)の問題へ視座が広がる演出である。

    総じて若い役者であるが、人の心が徐々に壊れ狂気に変貌していく姿がしっかり観て取れる。特に柱囲いの家庭内は、ある種の密室であり2人ないし3人による濃密な会話が緊迫感を生んでいた。大きなアクションはない、または出来ない限定空間での表現は難しいと思うが、一人ひとりのパフォーマンス力が強く、最後までテンポ良く観(魅)せていた。内容は”復讐にはf復讐を”という台詞に象徴されるように、暗く塞ぎ込むような気持にさせるが、コミカルな動きは現実から距離を置くような和らぎを覚える。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/04/10 19:47

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