渇愛 公演情報 名取事務所「渇愛」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2018/03/13 (火)

    取事務所の作品は、いつもセンセーショナルで、刺激的で、芝居好きの私のつぼを付きます。


    今回は韓国の作家キム・ミンジョンさんの作品です。

    アジアの演劇にも興味があるんですが、なかなか観ることが出来ません。韓国、インドネシア、台湾の演出家の舞台を4回ほど観たことがありますが、同じアジア人なのにまったく違う感性を感じてました。

    今回は作は韓国人ですが、演出、役者は日本人です。

    寺十五さんの演出は、韓国の粘っこさ、重たさをとてもよく表現していたと思います。寺さんの演出は何本か観ましたが、日本人の中にあるあきらめ感というか、すがすがしいほどの寂寥感を感じたのですが、今回は重くて、執拗で身動き取れませんでした。

    寺さんは役者さんとしても大好きです。




    闇が支配するような舞台、過去の出来事が思い出の断片のように浮かび上がり消えていく、その断片を繋ぎ合わせ、登場人物たちの愛の断片を拾っていく・・・・・。なんと辛く、禍々しい愛なんだ。




    ムーダン(巫女みたいなもの)の母と二人で育ち、ムーダンになることを母により運命付けられていたソヨン(森尾舞)が、若い画家ジェソプ(渡辺聡)と恋に落ち、母の反対を押し切り結婚する。貧しさのため初めての子どもを堕胎し、その傷を抱えたまま高校生となった一人息子ヒョンと今は美術教師となったジェソプとぎりぎりな精神状態のなかでも平穏な日を送っていた。ある日、ヒョンスが家庭に恵まれない友達ジンギ(西山聖了)を家に連れてきた。その日から、ソヨンが壊れていく・・・・。

    壊れていくという言葉が適当なのかはわからないが、彼女が求めても、求めても得られなかった愛とジンギの求めても求められなかった愛が惹かれあったのだ・・・・。




    亡くした子への罪悪感がジンギへの愛を駆り立てたのか、夫に求めた愛が物足りない結果だったのか・・・それは理解できなかったけども、彼女が母親の呪縛から逃れられなかったのはとても共感できました。声だけの母親の青山眉子さんが素晴らしい!!!

    彼女の声にソヨンの逃れられない呪縛を強く感じました・・・。母親というのは良きにつけ,悪しきにつけ絶対的な存在であるのです・・・・。




    登場人物の数だけ愛がそこにあるのに、皆自分の愛を主張して、お互いの愛をはねつけている・・・・大きな悲劇がそこにありました。




    渇くほどに愛を欲し、愛を欲するがゆえに渇く・・・・そんな気がしました。




    素晴らしい舞台でした。

    ありがとうございました。

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    2018/03/21 22:35

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