満足度★★★
なにか微妙な評価になりそうです。
親の期待と子ども達の反発。
長女としての「義務感」。そしてそれを理解されないもどかしさ。
「ダサイ」父親の愛。
そんなよくある家族の物語です。
それぞれの登場人物の葛藤・・・それはそれでいいのですが、観ているうちに、
「男はつらいよ」を思い出していました。
家族愛・・・それ自体はなんの反駁もありませんが、それをある意味、「これでもか」
というくらい劇中で繰り返されると、ちょっとうんざりします。
「はいはい、分かりました」「家族って大変だよね」
とでも言いたくなります。「ちょっと押しつけがましくない?」
そんなことをつぶやきたくなるのです。
そして、それは「寅さん」映画にも通じるものです。
ですから、素朴に「よかった」「感動した」「涙が止まらなかった」という感想から、
「ちょっとくどくない?」「愛の押し売りのようだ」といった感想まで、評価は2つに分かれる
のではないでしょうか。
私は作者にもっと冒険してほしかったと思います。
この劇の中の「愛」は、昔から「言い古された」ものです。何度も何度も見てきた構図そのものです。
「それはそうだ。でももっと別の切り口はなんものか」 そう思うと、なんともつまらぬ劇となってしまいます。
それをもっと掘り下げた作品としてほしかったと思います。
もう1つ。
家族の絆が得られる契機について。
それが「血の繋がりがないこと」「病との遭遇」など、ある意味「特殊」なことに設定することの是非です。
私は、上の2つを抜きにした「家族愛の深まり」を描いてほしかったと思います。
なにか特別なことがなければ、家族愛は育たないのでしょうか。
上の2つがなくても、愛は育つのだという「冒険」してほしかったと思います。
けっこう辛口となってしまいました。
しかし、この劇団の「誠実さ」については好感が持てますし、嫌いではありません。
役者さんの真摯な表現も然り。
それだけに「冒険」「斬新な切り口」がほしいのです。